ぐくと知り合ったのは小学1年生の時。
お互いに幼稚園は別々だったけどぐくが私の家の隣に引っ越してきた。小中高の一貫高だし家も隣だからずっと一緒。
……いわゆる腐れ縁ってやつ。お互いにお互いを尊重してきたいい関係だった。逆を言えば"幼馴染"として好き同士だったけどこの関係を崩したくがないが為に13年もこの思いに気付かないふりをしてきた。
ある日突然13年間ずっと続けて登校の際に迎えに来てくれたぐくが来なかった。私は不思議に思って学校でぐくに問いかけた所、「あ~…」などと視線を逸らされた。
もしや、こいつ、彼女出来た……??
こんな事初めててちょっと気まずいな…………、そう思っていたら急に手を引かれ私たちがよくサボる空き教室に連れてこられた。
『……ぐく?』
恐る恐る名前を呼んでみても返答はなく、先程引っ張られた右手はまだぐくと繋がれていた。
『……あの、ぐ「あのさぁ、」
俯いていたぐくが私の言葉を遮って声を発した。その言葉を合図に私はぐくの方を向くと
『……なに、』
頬が紅く染まっていた。
「ずっと言わなきゃって思ってたんだけど」
…………俺、彼女出来た。なんて照れながら言われたらどうしよう、結構ショックだなぁ、
「……お前の事、好きだわ」
朝だからか発せられた声はとても掠れた声で
「ずっと言えなかった」
自分でも自身の右手から熱くなっていくのが分かった。
「この関係が崩れちゃうんじゃないかなって」
…………私も、恐れてた。都合のいい"幼馴染"なんて関係がいつか崩れちゃうんじゃないかって、
「でも好きなんだ、お前の事」
きゅ、と私の手を強く握りしめられた
「…………お願い、俺から離れてかないで」
そう言ったかと思えばぐくの匂いに包まれた。……嬉しい
私とぐくの気持ちいが一緒だったなんて、夢見たい。気づいたらぐくの背中に手を回していた。
『……離れたりなんかしないよ、』
小さい頃に何度もハグはしてきたけどこんなに照れくさいのは初めて。
『……私もぐくのこと、すき、だいすき』
ずっと秘めてきた思いがぽろぽろ、と零れていく。
「……まじで?」
そう言いながら私の首に自身の顔を埋めて疑ってくる
『……まじです』
照れくさくて再度ぐくの背中に回した手に力を入れると
「…………やばい、キスしたい」
『…だめ』
「なんで?俺の事好きなのに?」
『……恥ずかしいもん』
「あぁ~…、もう、なんなのお前まじで」
ゆっくりと腕を解くと腰を引き寄せられぐくとの距離が一気に近くなる
『……ち、近いっ、』
ぐいぐいと胸元を押してもビクともしない。
「今ハグしたのに?笑」
『ハグとキスは別だもん…っ』
「なに?もしかして初キス?」
『………………知ってるくせに、』
お互いに彼女、彼氏という恋人を作ったことがないからこういう行為も全て初めてなのだ。
「お前の初めて奪えるとか嬉しい」
『ちょ、その言葉使い方ちが……んっ、』
口に柔らかい感覚、そう思った時には唇は離れていてぐくの鼻と私の鼻がくっついていた
『……ばか、だめ、って言ったのに…、』
「お前が可愛いからじゃん」
そういう事をサラッと言われるの慣れないから……
「ねぇ、もっかいしていい?」
『………………聞かないで、』
「…かわい、」
その日私達は初めてキスをした。朝からこんな事してたから勿論授業なんて頭に入ってこなくてずっとぐくで頭がいっぱいだった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!
転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。