【…………○○香水変えた?】
そう君は私の束ねた髪を自分に引き寄せると優しく匂いを嗅いだ。急に近くなった距離に思わず私は自分の首元を押さえる。
『……気の所為じゃないかな』
この暑さのせいで少し上目に束ねた髪も首にぴったりと張り付き、首に塗った日焼け止めが汗と混じって気持ちが悪い。
てひょんと並んで帰るのはこれで何回目だろう。
【……じゃあ、今週末何処行きたいか決めててね】
『うん、また明日…………送ってくれてありがとう』
手を振りながら帰るてひょんの背中を見つめていると、不意に手首に痛みが走った。誰かに手首を強く握られたのだ。後ろを向くと、まるで私と顔を合わせないように遅れて振り返ったじょんぐく。
『…………っ、じょんぐく』
名前を読んだ時には家の玄関は閉まっていて、扉に押し付けられていた。てひょんが角を曲がった時に手首を掴まれたから見られてないはず、なんてこんな状況でも彼氏のことを考えていられるなんて私も慣れたもんなんだなと自分自身でも感心した。
「むかつく……」
私の考えてることが分かったのか、塞ぎ込むかのように唇と唇を合わせると噛むようなキスを降らせた。
『…………や』
逃げるように引いた腰を阻止するように引き戻されると、そのまま最奥を突き上げられる。繋ぎ目から漏れる愛液がゆっくりと、お互いの脚を伝ってシーツにシミを作っていく。
「…………はぁ、」
背中に吐かれるじょんぐくの吐息が私を熱くする。
濡れた紙の様にぴったりとくっ付いた私達は、曰く離れる事無く脚を絡め離れないようにお互いを締め付けた。
『……………………………………、』
これで何度目だろう、てひょんを裏切ったのは。
今繋がっているのはてひょんでも誰でもなく、弟なのに。てひょんと重ね合わせても、てひょんの顔がだんだんと歪んでいく。目を暫く閉じて目を開けると目の前にはてひょんの姿なんて無いのだ。
ただひたすらに私を見つめてくれる弟しか、
そこに居ない。
「…………あし、ひろげて」
自分から指示しておいて、私が行動する前に脚を広げると自身のモノを埋めるように私に近づいた。
ゆっくりと私の中で広がるそれは温かくて、
気持ちが良くて、
思わず涙が出てくる。
『……』
嫌でも見える繋ぎ目。
見てから再度思わされる、あぁ私達は結ばれていいはずが無い関係なんだと。
触れられた所からじんわりと伝わるように温かくてなっていく躰はもはや、自分ではどうすることも出来なかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。