シェルターに戻った悟空さんは漸く鼻から手を離してスーハーと深呼吸をした。父さんも物凄く不機嫌そうな顔をしている。
と言うわけで、早速あなたさんを探しにシェルターをうろつく。因みにだが、父さんと悟空さんがあなたと対面するのは初めてである。
しかし、これがなかなか見つからない。通りかかったマイにも聞いてみたが、帰って来たのを確認してから全く見かけていないらしいのだ。
まさかまたシェルターの外に行ったのか…!?と思ったが、俺達はついさっきまで入口に立って話をしていたから、恐らく違うだろう。きっとここのどこかにいるはずだ。
そう思って暫く探し回っていると、やがて焚き火のそばでうつらうつらしているあなたさんを発見した。ブラックから逃げて来たことで疲れたのかもしれない。
そこに話しかけるのは少々気が引けたが、ブラックのあの有り様を想像するとやはり今聞くしかないと思い、ゆっくりと歩み寄った。
俺達の足音に気付いたあなたさんは、「んぁ?」と眠そうな声を上げてこちらを見た。ほぼ眠っていたらしい。ちょっと申し訳ないな…。
若干渋っているような様子でそう聞いて来たあなたさんを前に一瞬だけ何も言えなくなった俺達だったが、すぐに気を取り直して頷いた。
複雑そうな顔で唸り声を上げたあなたさんは、すっかりダンマリを決め込んでしまっている。何か話しにくいことでもあるのか?ブラックに何かを言われたとか…。
黙り込むあなたさんを見た父さんは、先ほども言っていたことをとうとう本人の前でも言った。
突然ブチギレたあなたさんの足で思いっきり股間を蹴られた父さんが呻き声を上げて崩れ落ちた。だからさっき否定したというのに…()
父さんには改めて「あなたさんがどれだけブラックを嫌っているのか」について説明しておくとして、取り敢えずこの場をなんとかしないと…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!