第3話

夢現(ゆめうつつ)
83
2019/12/25 07:42
ルブ
――あの、レイさん。
ルブ
ほんとに大丈夫なんですか?
零斗
――ぁあ。
朝の教室でカバンの中身を見て愕然と固まった俺を案じ、親友のルブが声をかけた。
今でこそ落ち着いているが、中を見て叫んだ直後は周りの引き気味の目が痛くてたまらなかった。
零斗
…だっても、どうして急にこんなものが……。
改めて、カバンの中――櫛と手鏡、リップクリームという入れた覚えのない物体たちを見つめる。
自分で入れた覚えがないということはつまり、
零斗
ルブ、お前かぁ!
ルブ
なんで僕!?
自分では入れていない。それならば他の第三者が入れたと考えるのが妥当だろう。そして、1番身近にいる犯行が可能な人物…と筋を追って考慮すると、ルブに行き当たった。
ちなみに、「ルブ」というのはニックネームで、「ルーズリーフ・ブリンガー」の略だ。ルーズリーフを常にひと袋持っている。1枚くれ、と言うとものすごい笑顔で渡してくる。

本名は忘れた。
ルブ
いやいや、なんで僕がレイさんのカバンにこんなもの入れなきゃなんないんですか!そもそもの動機が僕にはないですよ!というかいつ入れるんですか?朝来てカバン開けてすぐじゃないですか!その間に滑り込ませるってよほどの執念じゃないですか!そんなのあるわけがない!
零斗
めっちゃ長文で否定するじゃん…
ともかく、ルブが入れたのではないなら誰が?
解決かと思われたこの事件は、再びふりだしに戻った。
と、
ナイン
ねぇ、さっきから何を騒いでるの?
男ふたりの言い合いに、不意に女子の声が割って入った。

その声に否定的な雰囲気は無く、単純にうるさい俺たちに興味を示して来たようだ。
彼女はナイン。俺のクラスメイトだ。
そして――
零斗
ルブの彼女。――爆発しろよ。
ルブ
違いますけど!?
零斗
と、彼は言っていますが、本当の所はどうなんだ、ナイン?
ナイン
んー、何が爆発するの?何が違うの?
ルブ
ちゃんと話を聞いてフォローしてくれ……!
そう、ナインは頭が悪い。ごめんな。
ナイン
ねぇルブ、何が違うの?ねぇねぇ。
言いながらナインはルブの頬を弄る。…イチャついてやがる。
ルブ
だから、ナインさん
ルブ
そんなことするから僕に在らぬ疑惑がかかるんですよ!
ナイン
なんの疑惑?
ルブ
無限ループだ……
物わかりの悪いナインに説明するのがあまりに面倒で、ついにルブはダウンした。
ふと、俺はさっきまでの話題を思い出す。
俺のカバンに、入れた覚えのない櫛と手鏡、リップクリームが入っていたことだ。
零斗
ナイン、俺のカバンに、こんなのが入ってたんだけど
零斗
これってお前のか?
ナインはこれでも一応女子だし、顔も良い方だ。
ルブよりは可能性が高いと睨んだが、
ナイン
何これ…見たことない…
ナイン
レイ、この回すと出てくる細い棒って何に使うの?
ナインの手の中にある物――リップクリームをそんなふうに表現する人を俺は初めて見た。
零斗
それは、リップクリームだ。唇が乾いた時に塗るものらしい。
ナイン
へぇー、レイってそういうの詳しいんだ……
なんで俺が逆に説明しなきゃならないんだ。
ナイン
レイって、すごい"女子力"あるね!
零斗
女子…力…?
零斗
―――!
そのナインの言葉を聞き、俺は全てを思い出した。
昨日見た不思議な夢、そこに現れた謎の人物、そして俺はその男から何かを与えられ――


認めたくない事実を、認めざるを得なくなった。









零斗
能力って……
零斗
「女子力」なのかよーーーーーーーっ!!


どうせ能力貰うんだったらもうちょっといいやつが欲しかったかなーなんて!

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