長かった部活も終わり、学校から徒歩30分の自宅まで何とかたどり着いた俺は、問答無用でベッドにダイブした。
時刻は6時半。もう少しで夕食のはずだが、疲れた体にふわふわの布団の感触を知ってしまった俺に、もうそんな思考は残っていない。
誰もいない部屋で見えない誰かに遺言を述べた後、俺の意識は水の中へ沈んで行った。
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気が付くと、そこは…
見覚えのない、でもなんか見たことがあるような気がする、そんな場所だった。
学校の廊下のようで、どこかの和風旅館のようで。旅館とか行ったことないけど。
そんな場所に、変化が訪れたのはその時だった。
俺の前に、全身を黒い衣服に包んだ男が来た。
当然、俺は身構える。だって黒って悪そうじゃん。
だけど、
そう言って、男は両手を広げて見せた。
――見知らぬ人からプレゼントなんて、誘拐されんのか俺?
そんなことを考えていると、男は「大丈夫ですよ」と言って、
喜んでと言われてもそんなすぐに喜べないし。
俺は一応、棒読みで喜んでおいた。
男は、少し勿体ぶってから、
玉手箱は開けないでくださいっていう前置きだったよな?
男のなんとも雑な終わり方に不服申立てようとした時、
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夢は、密かに終幕を迎えていた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。