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第1話

夢の中で
112
2020/03/20 02:09
零斗
あー、疲れた疲れた!
長かった部活も終わり、学校から徒歩30分の自宅まで何とかたどり着いた俺は、問答無用でベッドにダイブした。
時刻は6時半。もう少しで夕食のはずだが、疲れた体にふわふわの布団の感触を知ってしまった俺に、もうそんな思考は残っていない。
零斗
このまま眠りの海に沈んできます。もう探さないでください。
誰もいない部屋で見えない誰かに遺言を述べた後、俺の意識は水の中へ沈んで行った。


゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜
気が付くと、そこは…
零斗
…どこだよ。
見覚えのない、でもなんか見たことがあるような気がする、そんな場所だった。
学校の廊下のようで、どこかの和風旅館のようで。旅館とか行ったことないけど。
そんな場所に、変化が訪れたのはその時だった。
謎の人
こんにちは、ご機嫌はいかがですか?
俺の前に、全身を黒い衣服に包んだ男が来た。

当然、俺は身構える。だって黒って悪そうじゃん。

だけど、
謎の人
あぁ、そんなに警戒しないで下さいよ。傷ついちゃうな、もう。
そう言って、男は両手を広げて見せた。
謎の人
それで、ワタシは何のためにここに来たかというと…
謎の人
えーっと、あぁ、そう!あなたにプレゼントを贈りたいのです。
零斗
プレゼント?俺に?あんたが?
――見知らぬ人からプレゼントなんて、誘拐されんのか俺?
そんなことを考えていると、男は「大丈夫ですよ」と言って、
謎の人
あなたには、能力をプレゼントします!
謎の人
いえーい!さあ、あなたも喜んで!
零斗
あー、いえー?
喜んでと言われてもそんなすぐに喜べないし。
俺は一応、棒読みで喜んでおいた。
零斗
だけど、能力って具体的になんだよ?
謎の人
それが気になってしまいましたかぁ。気になりますかぁ。
零斗
当たり前だよ。
男は、少し勿体ぶってから、
謎の人
それはですね、
零斗
…(ごくん)
謎の人
まあ、夢が覚めてからのお楽しみですね!
零斗
はぁ?
謎の人
開けてビックリ玉手箱的な感じですよ!
零斗
爺さんになるじゃねえか。
玉手箱は開けないでくださいっていう前置きだったよな?
謎の人
まあいいんですよ。
謎の人
それじゃぁ、お楽しみに〜!
男のなんとも雑な終わり方に不服申立てようとした時、
゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜゜
零斗
――ぁ。
夢は、密かに終幕を迎えていた。

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