『とりあえずさっさと出てってください』
はいぃっ!
心臓の鼓動が早まる
なんで、?後ろ向きだよね?
え、背中に目でもついてんの?
『とにかく同じ空気を吸っているという事実など、あってはならないのです。』
ああ、セリフか。。
『………分かったならさっさと失せろ。』
淡々と怒りのこもった言葉の最後には、ゲスのきいたか弱そうな女性とはありえないような言葉が発せられた。
俺はその言葉に恐怖を覚え、そのまま何も無かったかのようにドアを閉め、ドアに背を向けてもたれかかるように座り込む。
片膝にかけた腕に顔を埋め、そう呟く。
これが本物の声優の力。
いつの間にか坂田との通話も手が触れて切れてしまっていたようだ。
空気から圧倒された。
一語一句に状況、表情、心情、が込められていて映像がなくたって想像出来る。
頭の中で勝手に投影される。
はぁ。
これは何年やっても実力が追いつくことは無いだろうな、
ペンキで白くムラなく塗りたくられた天井を見上げる。
『浦田わたる』で無理だとしても『うらたぬき』で魅せるしかねぇなぁ、これは。
自然と口が綻び、まだ部屋の中ではあなたさんがセリフの練習をしているのが聞こえる。
音もない静寂な廊下で、俺はしばらくあなたさんのセリフをドア越しに聞くことにした。
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たくさんのコメントありがとうございます( •̥ ˍ •̥ )
現実にありそうな感じとか、探し求めていた小説などほんとに嬉しい言葉ばかりで、、、
更新頑張りたいと思います
もしご希望でしたらパラレルストーリーとしてくっつく人を何通りかで書くことも出来ますのでぜひコメントください⋈*.。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!