第15話

#11 あなたside
12,690
2019/11/23 01:32
あなた
あなた
わー、眼鏡眼鏡。
キャリーケースの中を慌ただしく漁る。
先程のゲームではまふまふさん、楽しんでくれて良かった。
よく知らない人だけど面白そうな人。
「ふふふ。」
さっきの勝負を思い出してつい、笑ってしまう。
そらる
そらる
おーい。まだかー?
玄関側から兄の呼ぶ声がする。
あなた
あなた
待って待って!
廊下を走り、急いで玄関へと向かう。
まふまふ
まふまふ
よし!じゃあ行きましょう。
あなた
あなた
この近くにラーメン屋さんなんてあるの?
そらる
そらる
まふまふの行きつけがある。
へぇ。ラーメン好きなんだぁ。
今、どんな状態かと言うとまふまふさんとお兄ちゃんが前を歩き、私が後ろを着いていくという状態だ。
私が話しかけると2人とも顔をこっちに向けて返してくれるから、優しいものだ。

性格までイケメンか。
10分ぐらい歩き小さな路地を通っていくと、ラーメン屋ののれんが掛かった小さな店を見つけた。
まふまふ
まふまふ
ここ、美味しいですよ。
あなた
あなた
こんな所にあるんですね……。
ガラガラガラガラガラ
お兄ちゃんが戸を開けると1人の店主が陽気に「いらっしゃい」っと言ってきた。
席に着いたあとも私たちは店主とお話をしながら料理が来るのを待っていた。
「はい。お待ちどうさん。」
そう言って店主が出してきたのは湯気の出てる美味しそうなチャーハンと、ラーメン2つ。
美味しそう……。
After the Rain
After the Rain
いただきます。
あなた
あなた
いただきます。
チャーハンの円の形を崩すように1口分をすくう。
顔を近づけると更に熱そうに感じ、フーフーと少し冷ましてから口に含んだ。
パクッ
あなた
あなた
美味しいですね。
まふまふ
まふまふ
でしょー?
私が感想を述べるとまふまふさんが間髪入れずに同意してきた。
すると、店主が「兄ちゃん、いつもありがとな!」と、笑顔で感謝の言葉を述べる。
そんなに、行っているのか……と思いながらチャーハンを完食する。
そらる
そらる
相変わらず早いな、あなた。
あなた
あなた
だって美味しいからねー。
まふまふ
まふまふ
そうですよ!そらるさん。
まふまふさんも最後の一口を食べ終わり、スープを飲む段階に入っていた。
お兄ちゃんも、あと少しの麺を食べれば残りはスープのみの状態だった。
まふまふ
まふまふ
よし、じゃあさっさと食べ終わっちゃいましょう。
そらる
そらる
ん。
あなた
あなた
ふぁいとーふぁいとー。
2人がごくごくとスープを飲み干す。

美味しそうだな。
次はラーメンを食べよう!
2人が完食するのを見計らい、私はお会計を済ませる。
そらる
そらる
ちょっ!あなた、俺が払うからいいよ。
まふまふ
まふまふ
いいえ、僕が払いますよ!
私がお札を2枚取り出し、店主に渡そうとするとお兄ちゃん達が止めてきた。
あなた
あなた
いいよ、いいよ。
そらる
そらる
だとしても、妹に払わせるわけには……。
あなた
あなた
私も、もうそれなりに稼いでるんだからね!
「お願いします!」と、店主に無理矢理お札を渡す。
「はい。お釣り。」と、返され

「ありがとうございます。」と返事をする。
まふまふ
まふまふ
むー。……じゃあ後でアイス、奢ります!
あなた
あなた
私、冷たいもの苦手なので大丈夫でーす。
まふまふ
まふまふ
えー。
あなた
あなた
「ご馳走様でしたー。」
ガラガラガラガラガラ
納得させていないものの、そのまま強行手段で店を出た。
あなた
あなた
じゃあ、私はちょっと用事が出来たのでここで。
まふまふ
まふまふ
用事?
あなた
あなた
ちょっと仕事が入っちゃいました。
内心仕事をやりたくないという気分なため、苦笑いをする。
そらる
そらる
じゃあ、送ってく。
あなた
あなた
え、いいよ。
そらる
そらる
それぐらいやらせろ。

















……ずるい。














お兄ちゃんはこういう時、かっこいい。















だって、だって……
























私の初恋だったもん。








「兄妹じゃなければいいなぁ。」
って、ずっと思ってた。
そうじゃなければ告白できたでたのに。




いつからかお兄ちゃんを好きになることを諦め、ごく普通の兄妹として接することを心がけていたため、今では自然なまでに振る舞うことが出来ている。
あなた
あなた
……うん。じゃあお願い。
私はいつも通りの笑顔をする。
まふまふ
まふまふ
……じゃあ、僕先に帰ってますね。
そらる
そらる
おう。
まふまふ
まふまふ
じゃあ、ご馳走様でした。あなたさん!
あなた
あなた
うん。ばいばい。
お兄ちゃんの家に帰っていくまふまふさんに手を振る。
まふまふさんが路地を出たところでお兄ちゃんが口を開く。
そらる
そらる
で、どこで仕事なんだ?
あなた
あなた
ここの、スタジオなんだけど。
私はそう言ってスマホに地図を開く。
そらる
そらる
ん?
近い。近い。
今、お兄ちゃんは私のスマホを背後から覆い被さるように見てくる。
お兄ちゃんの吐息が優しく首に当たる。






だめなのに。





自分の気持ちを押し殺しながら次の言葉を発する。
あなた
あなた
ここで、緊急打ち合わせがあるらしいんだ。
そらる
そらる
へー。緊急なんだ。
「で、いつから?」
あなた
あなた
えーと。あと10分後。
腕時計を見て、時間を答える。
そらる
そらる
……もうすぐじゃないか。
あなた
あなた
……そうだね☆
私が冷や汗を誤魔化すようにウインクをしながらあざとらしくこたえると、お兄ちゃんが「はぁ。」と、ため息をつく。
そらる
そらる
時間ないからタクシーで行くぞ!
あなた
あなた
はい!
そのまま大通りに出てタクシーを呼び、乗り込む。
そらる
そらる
〇〇スタジオまで。急ぎで。
「はい。」と、運転手さんが答える。
そらる
そらる
時間、間に合うか?
あなた
あなた
多分。
そこから、どんどん目的地に近づくにつれて、メーターが上がるのを観察していた。
やっぱ、タクシーは高いな。
すまない。という罪悪感を抱き、お兄ちゃんの方をみてみる。
足を組み、流れる景色を見ているお兄ちゃんはとても様になっていてかっこよかった。
私がしばらくお兄ちゃんを見ていると、その視線に気づいたのかこちらを振り向き、「ん?」と首を傾げる。








はあ。












反則……。






「なんでもない!」と、直ぐに私も窓の方に視線を映す。










これ以上、この気持ちは膨らませたくないのに。




















……きつい。
















鳴り止まない心臓が、延々と脈を打ち、私の鼓動を早くする。

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