源くんは少し面倒くさそうに、私の頭に付いた枯れ葉を取った。
彼は苦笑いしながら、私の頬に付いた泥を素手で拭いた。
私は、全身泥だらけ、何枚かの枯れ葉を被り、公園のど真ん中でちょこんと座っている。
─────何故って?それはね、
触れるのが嬉しい。
人は触れないけど、やっぱり嬉しい。
それは、私の中で絶対に揺らがない心情。
幽霊になったら何も触れないと思っていたから。
だから、余計に触れることが嬉しくなる。
源くんはそう言って溜息を吐く。
どうやらこれは、源くんの悪い癖みたい。
彼は微笑みながら、私の頭を撫でた。
簡単に女の子の頭を撫でられるなんてさすが遠坂くん、と思った。
彼は私の頭の上に手を置いたまま、話を変える。
私はガッツポーズをとった。
彼はそう言いながら、人差し指と親指をくっつけて指で《ゼロ》を作った。
彼はにかっと笑った。それを見た源くんも、少し口元を緩ませた。
私も、にこっと笑う。
幽霊になって、彼を幸せにするって決めて、源くんに出会って、遊園地に行く。
それは、普通なら考えられないことばかり。
だからこそ、ドキドキが止まらない。
次はどんなことが起こるんだろう、って。
それって凄く嬉しいことだよね、と静かに思った。
源くんは面倒くさそうに、溜息を吐いた。
その癖直らないかなー、とか思ったけれど、まあそれが源くんだしいっか、とも思った。
彼はまた、にかっと笑う。
いつもの笑顔なのに、その笑顔は私が死ぬ前よりも輝かしく見える。
私は二人にピースサインを贈る。
彼が今、幸せなのかは分からない。
けれど私は今、凄く幸せだ。
君も幸せだと良いな、と私は彼に微笑んだ。
私はこの日、自分にとっての《幸せ》が分かったような気がした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。