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第3話

其の1 7ツ半
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2020/11/28 14:21
7ツ半

痛い、苦しい、寒い
意識はだんだんと遠のいて行く。

生まれて3年の間集落では不作が続いた。
もともと小さな集落だった。
人は少なかった。稲を1年育てきるのでやっとの人数だった。
でも死んだ。不作で、集落はとうとう指で数えられるほどの人数になった。
「オニノコ」 それが初めて覚えた言葉だった
人々は口々に言った。
「鬼の子だ。」 「神の祟りだ。」

生まれたあと、近くにいた女は目の前で
自らの胸を刺した。
誰だったか、そんなのは覚えていない
その女の隣にいた男は集落からいなくなったと聞く。
生まれて間もなく、やっと手足が動かせるようになる時、「父」はいなく、
「母」のような「それ」はもう既に動かなくなっていた。

そして七ツ半。
「それ」の服を剥がして寒さをこらえる今日。
今まで、食事は家に残ったもの、尽きた日からは「それ」で済ませた。
ふと自分の身体を見ると痣、傷、もはや赤く、青くないところは見当たらない。
家の前には札が貼られている。そしてたまに来る男達は農機具を持って自分に襲いかかる。

「殺れ。」「だめだ。神の祟りを殺した夜には何があるかわからぬ。」「なら俺が殺る。」「いい加減にしろ。集落を滅ぼす気か。そろそろ、疫病神が自然死するまでの辛抱だ。」

首は切られない。「それ」のように胸も刺されない。何故か致命傷を避けて襲いに来る。
、、、ここから出られることは無いだろう。扉は外側からしか開けれないようになった。
隙間から、ゆきが入ってくる。寒い。
下手に動くと傷が痛む。

「………寒い。」

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