7ツ半
痛い、苦しい、寒い
意識はだんだんと遠のいて行く。
生まれて3年の間集落では不作が続いた。
もともと小さな集落だった。
人は少なかった。稲を1年育てきるのでやっとの人数だった。
でも死んだ。不作で、集落はとうとう指で数えられるほどの人数になった。
「オニノコ」 それが初めて覚えた言葉だった
人々は口々に言った。
「鬼の子だ。」 「神の祟りだ。」
生まれたあと、近くにいた女は目の前で
自らの胸を刺した。
誰だったか、そんなのは覚えていない
その女の隣にいた男は集落からいなくなったと聞く。
生まれて間もなく、やっと手足が動かせるようになる時、「父」はいなく、
「母」のような「それ」はもう既に動かなくなっていた。
そして七ツ半。
「それ」の服を剥がして寒さをこらえる今日。
今まで、食事は家に残ったもの、尽きた日からは「それ」で済ませた。
ふと自分の身体を見ると痣、傷、もはや赤く、青くないところは見当たらない。
家の前には札が貼られている。そしてたまに来る男達は農機具を持って自分に襲いかかる。
「殺れ。」「だめだ。神の祟りを殺した夜には何があるかわからぬ。」「なら俺が殺る。」「いい加減にしろ。集落を滅ぼす気か。そろそろ、疫病神が自然死するまでの辛抱だ。」
首は切られない。「それ」のように胸も刺されない。何故か致命傷を避けて襲いに来る。
、、、ここから出られることは無いだろう。扉は外側からしか開けれないようになった。
隙間から、ゆきが入ってくる。寒い。
下手に動くと傷が痛む。
「………寒い。」
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。