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第1話

不安
2,361
2020/06/05 17:43
あなた

あー、終わったぁ...

授業終了のチャイムが鳴る。

約1時間、座りっぱなしだった体は伸びをするとパキパキと音をたてた。




机の横にかかっている鞄からお弁当を取り出し、彼の席に向かう。
昼休みが始まったのにもかかわらず、まだ机に伏せて寝ている。その後ろから覆いかぶさるように抱きつき、声をかけた。
あなた

はーるッ! お昼 一緒に食べよ

羽瑠
うぁっ…あなた…?
ガタッ、と足を机にぶつけて驚く。

その綺麗な黒髪が私の頬をくすぐった。
彼から離れて空いていた前の席の椅子を半回転させ、机越しで向かい合うように座る。

あなた

おはよう、もう昼休みだよ?

羽瑠
うそ、…ノートとってない
目を擦りながら頭を上げた彼の机の上に広がっているノートは真っ白なまま。

腕をおいていたからか少しくしゃっとしている。


それを見ればやらかした、とこちらを見てきた。
あなた

後で見せてあげる

そう言えば、ぱっと表情を明るくさせた。

コロコロ変わる表情はまるで犬のよう。男子のくせに、きっとそこらへんの女子の何倍も可愛い。
羽瑠
ありがとう
このへら、っと笑う愛らしい笑顔、それを見ているのは私だけじゃない。

クラスの女子からの視線が冷たく刺さる。

羽瑠は容姿も性格も“弟みたいで”可愛い。

当然、好意を寄せる女子も多いが本人はそれに気づいてないかもしれないんだから大問題。

告白だっていろんな人からされてるし、その現場を目撃したことだってある。

そんな彼から告白されたときはもちろんびっくりした。けど、それ以上に嬉しかった。

今は私が羽瑠の彼女だけど、いつか他の誰かに目移りしちゃうのかなって考えると悲しくなるのは本当のこと。
羽瑠
あなた…?大丈夫?
そんな悩みの種は私の頬にツーっと優しく触れて心配そうにこちらを見てくる。
あなた

あ、ううん。大丈夫!

ふるふる、と首を振り少しぎこちないかもしれない笑顔でそう返した。
羽瑠
ん、そっか。
一瞬 、ほんの一瞬 悲しそうな表情が見えたがすぐに微笑んでそう返された。














「君のせいで不安なの」
















言えるわけがない。


















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2018-03-24

✎投稿


2018-08-13

✎ 誤字脱字 修正しました

2020-06-06

✎誤字脱字 修正しました。

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