來雅side
黙って聞いてたけどそろそろ限界だ。
そもそもおかしいんだよ
なんであなたが“心配されてる”って言葉だけで済ませられるのか理解できない。
いや、こいつも気がついてるはず。あいつが、羽瑠が普通じゃないことくらい。とっくに。
俺の言葉を遮るように飛んできた彼女の声。
怒りと悲しみを含んだような声色で。
言っていることは滅茶苦茶。
しきりに触っている首筋には薄らと先程ついたものであろう赤い跡(シルシ)。
僅かに震える細い腕。
焦点が合っていない瞳。
その瞳の裏側にいるのはあいつかそれとも他の誰かか。
“突き放せるわけがない” これはあいつがあなたに逃げ道を残していない証拠。
同時にあなたがあいつを受け入れている証拠。
こいつらの事情に深く関わっちゃいけない。
頭の中で何かが呟く。
警報かただの逃げか。
それはまだ分からない。
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2018-08-28
✎ 投稿
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!