今日の体育は、男子がサッカー、女子はソフトボールをしていた。
私はいつも通り花満くん観察。
花満くんは見事ゴールを決め、女子の声援に満面の笑みで両手を振った。
女子たちはライブ会場かと思うほどの黄色い声を上げる。
そんな中、私はみんなに隠れてスマホのカメラを起動し、かわいい花満くんを写真に収めようと顔を上げた。
けど、スマホを構えた私と花満くんの目がバッチリ合ってしまう。
私が焦ってスマホをポケットにしまうと、花満くんはウィンクをしてから、またボールを追いかけていった。
ミルクティー色のふわふわの髪を風になびかせ、楽しそうに走っている花満くんは本当にかわいいなぁ、と私はまた見惚れてしまう。
ベチッ
しかし、頭を軽く叩かれた衝撃で私は現実に引き戻される。
美樹ちゃんはバットを置いてベンチに戻ってくると私の隣に座った。
急に聞こえた声に振り返ると、ベンチの背もたれに両手をついた花満くんが私の顔をニヤニヤと覗き込んでいた。
花満くんの隣には、彼といつも仲良く一緒にいる田島慧人くんがいた。
少し不貞腐れているような表情の花満くんは、私をじっと見つめてから口を開く。
花満くんはベンチの後ろでしゃがみこみ、私を見上げて首を傾げる。
花満くんに敬語になってしまうのは、憧れが高じてそうなってしまうだけで特に理由なんてない。
けど、こんな風に悲しまれるとは思っていなかった。
花満くんは立ち上がって田島くんについていき、振り返って笑顔で手を振ってくれる。
不自然なくらいどもりながら精一杯いつも通りに返事をすると、花満くんはこちらに駆け寄ってきて頭をふんわりと撫でてくれる。
そのまま花満くんは手で口元を隠して私に耳打する。
ドキッ ドキッ ドキッ
花満くんは走って田島くんを追いかけていき、その時、授業終了の鐘が鳴った。
けど、鐘の音なんて聞こえないくらい鼓動がうるさくて、頭の中では「嫉妬しちゃった」という言葉が繰り返し流れていく。
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