無料スマホ夢小説ならプリ小説 byGMO

第3話

笑顔が好きです!
2,404
2019/10/27 08:18


花満くんとの強引ツーショット事件から数日、彼はよく私に話しかけてくれるようになった。

花満周
花満周
まーつばちゃんっ!
松葉花音
松葉花音
ひゃぁあっ!?


 早朝の教室で一人きりだと思っていた私は、急な呼びかけに驚いて持っていた花瓶を離してしまう。

 しかし、すかさず花満くんが後ろから手を伸ばし、見事花瓶をキャッチしてくれた。

花満周
花満周
セーフ! 驚かしちゃってごめんね? あと、おはよっ
松葉花音
松葉花音
う、うぅん! 拾ってくれてありがとう、……ございます。……おはよう


 花満くんから花瓶を受け取って花の水替えに行こうとすると、彼は親ガモを追う子ガモみたいに可愛くひょこひょことついて来た。

 私が振り返るとにっこりと微笑んで首を傾げている。

松葉花音
松葉花音
(なんで花満くんって、一つ一つすることがこんなに可愛いんだろう)
花満周
花満周
え!? なんでそんなに渋い顔してるの!? ついてきたの嫌だった?
松葉花音
松葉花音
へっ!? ……あ、あぁ!


 ニヤけるのを我慢する癖が出ていたようで、花満くんは私の何とも言えぬ表情に驚いているようだった。

松葉花音
松葉花音
違うんです! ……こ、これは、顔が緩みそうだったのを堪えていた……というか?
花満周
花満周
緩みそう? それって笑っちゃいそうだったってことだよね?
松葉花音
松葉花音
笑うというより、……ニヤける? なので、ちょっと違いますけど
花満周
花満周
えー、俺松葉ちゃんの笑顔見たいなー! 堪える必要ないよ!
松葉花音
松葉花音
ダメです! 絶対気持ち悪いから!


 私は花満くんに背を向けて水道の方に歩いていき、花を抜いて花瓶の水を捨てた。


 隠れて写真を撮っていたことも気持ち悪いと思われているかもしれないのに、これ以上気持ち悪いところなんて見せたくなかった。


 また花満くんが歩み寄ってくる軽やかな足音が聞え、私の後ろで止まる。

 花満くんは後ろから花瓶を取り上げ、シンクの中に置くと――。

松葉花音
松葉花音
ふひゃっ!? あははっ、ちょっ、ははははっ!


 予告もなく脇腹をくすぐりはじめた。

 私がくすぐったさに我慢できず笑うと、花満くんはすぐにその手を止めてくれる。

花満周
花満周
ほら! やっぱり松葉ちゃんの笑顔かわいい!
松葉花音
松葉花音
そ、そんなことないです!
花満周
花満周
えー? なんでそんなに嫌がるの? いい事なのに
松葉花音
松葉花音
……それは


 ただ、私は自分に自信がなかった。

 暗くて、不器用で、地味で、友達も少ない。

 花満くんを可愛いと思い始めたのも、憧れてよく見るようになったのがきっかけだった。


 そんな彼に嫌なところを見られて褒められるというのは、とても複雑で恥ずかしい。

花満周
花満周
じゃあさ! こう考えてみてよ。松葉ちゃんは俺の笑顔が好きで撮ってたんだよね?
松葉花音
松葉花音
そ、そうです
花満周
花満周
俺も松葉ちゃんの笑顔が好きだから見たいだけだよ!
松葉花音
松葉花音
そ、……そんな、好きなんてっ!


 花満くんが私の笑顔を好きなんてありえない。

 そう思いながらも、体中の熱が頬に集まり赤く染まっているのが自分でもわかってしまう。


 花満くんはそんな私と目が合うと、ゆっくりと耳元に顔を寄せて囁いた。

花満周
花満周
松葉ちゃんが照れてるのも可愛くて好きだけどね
松葉花音
松葉花音
――っ!?(また可愛い花満くんじゃない!!)


 私が恥ずかしすぎて動けない間に、花満くんは花瓶の水を入れ替えて教室の前まで歩いていき振り返った。

花満周
花満周
ほら、松葉ちゃん教室入ろう?
松葉花音
松葉花音
……あ、は、はい!


 可愛い笑顔は好きだけど、

 花満くんが不意に見せる表情に、私は心臓が持ちそうにありません。