カーテンの隙間から差し込む夕日で目が覚めると、私は保健室のベッドで寝ていた。
ふと、ぬくもりを感じて視線を動かすと、花満くんが私の手を握りながら眠っている。
そんなことを思いながらもう片方の手を支えに起き上がろうとするが、肩が痛んでベッドにまた寝転んでしまう。
そう言われて、階段から落ちそうだったこと、花満くんが必死に手を伸ばしてくれた光景を思い出した。
花満くんの悲しそうな表情に胸が痛んだ。
きっと、私のことだけじゃない何かを思い出している気がする。
少し寂しそうな笑みを浮かべて、花満くんは椅子から立ち上がろうとする。
花満くんは椅子に座り直すと、私の手を優しく握ってくれる。
花満くんはまた無理に笑っていて、言わない方が良かったと少し後悔してしまう。
けど、私はそんな表情してほしかったわけじゃない。悲しんでほしくなくて……私にできることなんてないかもしれないけど、どうにかしたくて……。
花満くんは私とつないでいる手を見つめながら少し悩んでいるようで、そんな彼の手を優しく握ってみると顔を上げ微笑んでくれる。
幼馴染さんは事故で……、花満くんは前にそう言っていたけど、他にもできることはあったという言葉にはふくみがあった。
それ以上聞くことはできないけど、きっと、花満くんが後悔し続けてしまうようなことがあったのかもしれない。
幼馴染さんのことは、やっぱり私にどうにかできる気がしなかった。
けど、私のことまで気にしてほしくない。
私が花満くんと一緒にいて、たくさん助けてもらったことを、笑顔にしてもらえたことを伝えて、いつか後悔が和らげればいいと……今はそれを願うだけだった。
ガラガラッ
先生が締め切ったカーテンに歩み寄ってくる中、花満くんが覆いかぶさるように迫ってくる。
優しく包み込むように花満くんの手が背中に回り、ギュッと抱きしめられる。
同時に体ごと引き起こされ、私は肩の痛みもなく起き上がった。
花満くんはいたずらっ子のような笑みを浮かべ、先生やお母さんにあいさつをして保健室を出て行く。
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編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。