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第6話

みんなで!
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2019/11/15 06:28


 お昼休みになるといつも私の前の席に美樹みきちゃんが座ってお弁当を広げる。

 けど、今日は目の前に花満はなみつくんが座っていて、その両脇に美樹ちゃんと田島たじまくんが立っている。

花満周
花満周
松葉まつばちゃん! ご飯食べに行こう!
松葉花音
松葉花音
……う、うん?


 学校に食堂はないし、外に出ていいわけでもない。

 「食べに行こう」と言えば空き教室とか中庭くらいだけど、花満くんは先頭を切って迷いなく階段を上っていく。

 この階段を上った先にある場所は一つしかない。

松葉花音
松葉花音
花満はなみつくん、もしかして屋上に行くの?
花満周
花満周
うん! 風が気持ちいいんだよー!
松葉花音
松葉花音
けど、屋上って完全封鎖って……
花満周
花満周
そう!
だから、みんなには秘密だよ?


 花満くんは口元に人差し指を立て、いたずらっ子のような笑みを浮かべる。

松葉花音
松葉花音
(ダメだってわかってるけど、そんな可愛い笑顔見せられたら何でも許せちゃうよぉ!!)
田島慧人
あー、無理して止めなくていいから。花満は屋上に行くって言ったら止めても聞かないんだ
松葉花音
松葉花音
そ、そうなんだ
小川美樹
ていうか、そもそも開くの?
鍵は職員室にある一つだけでしょ?
花満周
花満周
それは心配いらないよー。
一人の先生に許可は取ってるから!


 薄暗い屋上扉前につくと、花満くんはなんなく扉を開けてしまう。

花満周
花満周
ね? ほら、お昼ごはん食べよう!


 花満くんは薄暗いその場所から飛び出し、さわやかな風が吹き通る青空の下で無邪気むじゃきな笑顔を浮かべた。

 私たちはそれにつられて微笑みながら屋上に一歩踏み出していく。





 皆で円になってパンやお弁当をたべていると――。

花満周
花満周
松葉ちゃんのミニハンバーグ美味しそう!
田島慧人
こら、ねだるなよ
松葉花音
松葉花音
あ、大丈夫だよ。
花満くん、一ついる?
昨日の残り物だけど
花満周
花満周
ほしいー!
ありがとう、松葉ちゃん!
小川美樹
花音かのんみたいに甘やかす女の子が多いから花満くんはこうなったって感じね
花満周
花満周
あはは! ……そうかもね


 花満くんは笑っているけど、一瞬、その表情に影が落ちたように見えた。

松葉花音
松葉花音
(あれ? ……今)
花満周
花満周
はい! 松葉ちゃん、あーん
松葉花音
松葉花音
へ? え!? な、ななななんで!?
花満周
花満周
お返しに俺のメロンパンあげるー
松葉花音
松葉花音
(お返しって言っても、そ、それは食べかけのメロンパン!! か、間接キスになっちゃう!?)


 私が花満くんとメロンパンを交互に見て迷っていると、




        トンッ




 と美樹ちゃんが私の背中を押した。


 私のくちびるはその勢いでメロンパンに触れてしまい、覚悟かくごを決めて一口頬張ほおばる。

 メロンパンの甘さが口中に広がり、それと一緒に頬がほわほわと熱くなっていく。

松葉花音
松葉花音
(食べちゃった!!!
か、間接……あー!!!)
花満周
花満周
美味しいでしょ?


 私はしゃべることもできず精一杯せいいっぱい、頭を上下に振ってうなづいた。

田島慧人
はぁ、見せつけてくれるよな
花満周
花満周
えー? なに、慧人けいとうらやましいの?
田島慧人
ちげーよっ


 田島くんは、ニヤニヤと覗き込む花満くんの頭を叩いて2人はじゃれ合い始める。

小川美樹
ちょっと、はぁ、二人ともパン落とすよ? 危ないなぁ、かして


 こんな風に友達とお昼ご飯を食べるのが初めてで、私は自分が思っているより舞い上がっていたようで……。




         カシャッ



松葉花音
松葉花音
……あ


 無意識に携帯で楽しそうな3人の写真を撮っていた。

 けど、シャッターを切る音ともにみんなの視線が私に突き刺さる。

松葉花音
松葉花音
え、えっと、……ごめんなさい


 さっきまで楽しそうに騒いでいた花満くんは静かに立ち上がり、私の前まできて携帯に触れる。

 抵抗することなく手放すと、花満くんは私の手も取りみんなの方へと引き寄せた。

花満周
花満周
はい、みんな集まってー!
松葉花音
松葉花音
え? え、怒って、ないの?
花満周
花満周
怒ってるよ! どうせならみんなで撮ればいいのに、これだと松葉ちゃんだけ写ってないじゃん! だから、撮り直し!
田島慧人
改まって撮るとなると緊張するけどな
小川美樹
はい、田島くん、余計なこと言わなーい!
花満周
花満周
はいはーい、撮るよー! はい、ちーず!




         カシャッ




 写真を撮り終えると花満くんは携帯を返してくれた。

 画面には楽しそうに笑っている私たちがいて、こんな風に友達と撮った写真は初めてだった。

花満周
花満周
ね、こっちのほうがいい!
松葉花音
松葉花音
う、うん! ……嬉しい


 満足したのか嬉しそうに笑っていた花満くんは寝転んで、広くて青い空を見上げる。

花満周
花満周
はぁー、楽しいね


 その様子を見た田島くんも寝転がり、私も美樹ちゃんと顔を見合わせて微笑んでから同じように寝転び空を見上げた。

松葉花音
松葉花音
ありがとう、花満くん
花満周
花満周
こちらこそ、ありがとう! 俺はみんなで楽しいことをしてるだけだから
松葉花音
松葉花音
……うん。ありがとう! 美樹ちゃん、田島くん
田島慧人
いーえ、楽しいことなら何でも付き合うし
小川美樹
楽しいところを撮るのは悪い事じゃないからねー。いいんじゃない


 一人の時よりみんなで見上げる青空の方が綺麗に見えて、私はまたカメラを起動する。


 シャッターを切って、いつもより近いその青空を写真に残した。