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第1話

可愛い花満くん!
5,197
2019/10/10 09:59


私のクラスには、花のように可愛く明るい笑顔で大人気の男の子がいる。



花満周
花満周
あ、松葉まつばちゃん! それ今日発売だった秋限定のお菓子でしょ!


 教室で友達と2人でお昼ご飯を食べていると、後ろからひょこっと花満はなみつくんが顔をのぞかせた。

松葉花音
松葉花音
は、花満はなみつくんっ!!?
花満周
花満周
俺も今日、パンプキン味のクッキー買ってきたんだぁ! 交換しない? おねがーい!


 ゆるく首を傾げて、にぱーっと明るい笑顔を見せてくれる花満くんに、私の思考はもうお菓子どころではなかった。

松葉花音
松葉花音
(こ、この可愛い花満くんを写真に収めたい!!)
花満周
花満周
松葉ちゃん? ボーっとしてるけど、大丈夫?
松葉花音
松葉花音
へっ!? あ、ご、ごめんなさい! えっと……
女子生徒1
花満くーん! あたしも松葉さんと同じの買ってきたよー! こっちで一緒に食べようよー


 一人の女の子が花満くんの腕を引いて後ろの席へと連れて行ってしまった。


 私がその後ろ姿をボーっと眺めていると、一緒にご飯を食べていた友達が呆れた声を出した。

小川美樹
はぁ……、花音かのん? み・す・ぎ
松葉花音
松葉花音
あっ! み、美樹みきちゃん! ご、ごめん!
小川美樹
いや、謝らなくていいけどさぁ。ホント好きだね、花満くん
松葉花音
松葉花音
だ、だって、すごく可愛いくない!?
花満周
花満周
え、なにがなにがー?
松葉花音
松葉花音
ひゃぁっ!?


 花満くんはまた後ろからひょっこりと現れ、ニコニコと話に混ざってきた。

花満周
花満周
ははっ、ごめんね。また驚かせちゃった?
松葉花音
松葉花音
そ、そんな、大丈夫……です! それより、……どうしたんですか?
花満周
花満周
あっ! そうそう! はい、これ。良かったら2人でどーぞ


 花満くんはそう言って、私に小包装のクッキーが2つくれた。

松葉花音
松葉花音
え、けど、さっきの子たちと
花満周
花満周
これ美味しいから! 二人にも食べてもらいたいなーって! また今度お菓子交換しよーね!


 花満くんは嬉しそうに笑うとさっきの子たちの席へと戻っていった。

 私はニヤけてしまいそうな顔を精一杯引き締めて、美樹ちゃんを見た。

松葉花音
松葉花音
み、美樹ちゃん、わ、わわ私の顔、大丈夫?
小川美樹
いや、ものすごいわ。眉間にしわ寄ってるのに口元半笑いでちょっと怖い
松葉花音
松葉花音
だよねぇ……、けど、ああいうところ! わざわざ戻ってきてお菓子くれるの! ていうか、お菓子美味しそうに食べてる花満くんが可愛い!! 優しい上に可愛いの!
小川美樹
お菓子くらいでそんな……。もう、わかったから。その顔どうにかしなって
松葉花音
松葉花音
あー、写真撮りたかったなぁ……
小川美樹
それは変態。我慢しなよ
松葉花音
松葉花音
けど、この「花」フォルダーを花満くんの笑顔でいっぱいにしたいのー!
小川美樹
また、やばいこと言ってるし。隠れて写真なんて撮ってたら、いつか痛い目見るんだからもうやめなよ
松葉花音
松葉花音
ほら! この花満くんの横顔よく撮れてるでしょ!?
小川美樹
はぁ、もう聞いてないし



 この時の私は、可愛いクラスの人気者の1ファンというだけだった。

 花満くんが告白されている現場を写真に撮ってしまうまでは。








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