屋上に行った日から数日が経った。
一人で登校していると、校門を抜けた先で花満くんの後姿が見える。
振り返った花満くんは私に気付くと、ふわっと花が咲くように笑みを浮かべて手を振ってくれた。
いつの間にか私から話しかけることも普通になり、また前よりも仲良くなれたと実感している。
けど、良い事だけではなく、あの日からずっと胸につかえていることがある。
花満くんの幼馴染さん。
たぶん、何かをきっかけに亡くなった幼馴染さんを思い出したとき、花満くんは悲しそうな表情を浮かべているのだと思う。
荒牧先生いわく、私はその幼馴染さんに似ているみたいだけど、もしかすると私が思い出すきっかけになっているのかもしれない。
そんな心配がずっと心の奥底でくすぶっている。
花満くんと教室に向かいながらボーっと考え込んでいると、急に横から花満くんの顔が迫ってきた。
花満くんはあまり納得していないようだけれど、私は彼の背中を押して一緒に教室へと入り、話を無理に切った。
それから美樹ちゃんとなんてことない雑談を交わし、授業が始まる。
そこまで考えて、私は自分でも否定したいほど卑屈で嫌な答えが思いついてしまった。
自分に向けられていた笑顔も、言葉も、優しさも全部、違う人へのものだったら……。
怖くなった私はこれ以上考えないように、必死に黒板の文字をノートに書き写した。
1限が終わっても気持ちは落ち着かず、少し花満くんと話すのが恐い。
廊下で待ってくれていた花満くんと田島くんに声をかけて教室に向かうが、私はその間に一度も花満くんを見ることができなかった。
ぐるぐる考えすぎたせいか、なんだか体もフラフラして足がもつれた時――。
グイッ
田島くんが私の腕を掴んで支えてくれた。
私が説明をしていると、心配そうな花満くんと目が合ってしまう。
花満くんが私の額に触れようとした時、授業中に考えていたことが頭によぎった。
バシンッ
私はとっさに花満くんの手を跳ねのけ、その勢いで力の入らない体は後ろへと倒れる。
床に足がついていないような浮遊感。
意識は遠のき、最後に見えたのは必死に私に手を伸ばす花満くんだった。
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