第56話

「轟焦凍の怒り」
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2023/01/24 12:06
「巫山戯た事をっ…」


「ほんとで〜す。」


ギロりと俺を睨むエンデヴァー。

その顔面はヒーローとしてありなのか…?



「…あ……、手ェ火傷した。」


何か痛いなーって思ったら…。

指が数ヶ所真っ赤になってしまってる。


まぁNo.2相手に無傷はそりゃあ無理だろ。


俺だってまだまだヒヨっ子だしな。



「っん"ん"…。さて、まだやるだろ?エンデヴァー?」

「勿論だ。」


元気に立ち上がるエンデヴァー。

そこで立ち上がるのかー、長期戦確定じゃん。


そう思って再び彼の首を狙いにかかる。



「っん"」


喉が痛くて少し咳き込む。







ゾクリ




隙を見せた俺にエンデヴァーの、炎のグーパンが降り注がれようとする。


「っ……!!」




その鉄槌をうける、覚悟をする。



その瞬間、


バキバキと、それはまるで、体育祭で瀬呂を捕まえたあの氷壁のように。


大きな氷塊が俺とエンデヴァーの間に出来上がった。




「……………なにしてんだ。」




「…しょー、…と。」



怒りの形相でこちらをみる轟焦凍クンが立ってた。
その後ろで、心配そうな顔をした冬美さんも。



「…なにしてんだって聞いてる。」


焦凍は信じられない位低い声で、俺に問う。


「え…っと、……修行!!No.2の実力がみたくて!!手合わせお願いしたんだよ!!」


吃どもる俺に違和感を覚えず信じてくれ。

こんなに怒った焦凍は見た事なくて、どうしたらいいのか分からなくて、


怖かった。



「…親父、こいつの体が弱ぇの知ってるだろ。なんで断らなかった?」


「ちが、焦凍。俺がエンデヴァーに無理言って、」


そう言い切る前に焦凍は俺に抱きついた。

突然の事すぎて俺は固まる。



「身体の末端が冷てぇ。震えてるし、咳き込んでるだろ。」


リカバリーガールが飛んでくるぞ、と笑えない冗談を言う。


「あー…、うん、大丈夫。まだ大丈夫だ」


俺はそう言って笑う。
焦凍はほのかにシャンプーの香りがして、心地が良かった。


「親父も、あなたに無茶させるのはやめてくれ。」


怪訝そうに顔を歪めるエンデヴァーは立ち上がり、家の奥へ姿を消した。


「……ごめん。」

「心配しただろ。姉さんに青い顔で親父とお前が喧嘩してるって言われんだぞ。」


血の気が引いた、と、呆れ顔で言う。

え、まじめっちゃごめんなさいなんだけど。





ちゃんと冬美さんにも謝って、俺は焦凍の部屋へ向かった。

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