2月14日、その日は全ての女子による祭典ー…
金曜日の朝、唐突にそう聞かれ私は疑問の表情を浮かべる。
私がそう言うとひよりは嬉しそうに笑いながら
純粋にひよりから貰えるというのは嬉しかった。ひよりから話をもちかけられてから辺りをふと見ると、女子たちが席の近くでざわめいているような気がした。
いつも数人の女子がいるので対して珍しくはなかったがここまで集まるのは入学式以来くらいだろうか。
…ああ、そういうことか。
会話の内容から察するにLIP×LIPの2人に群がっているのだろうと容易に想像が出来た。
にこっと王子様スマイルを女子生徒に向ける染谷くん。私はそんな笑みを見て軽く鳥肌が立ってしまう。
普段の染谷くんからは想像もできないくらいのいい笑顔だった。そこら辺はさすがアイドルと言える。
染谷くんが後ろから話しかけてくる。
素っ気なく返すと再度ひよりと話し始めるのだった。
夕刻ーー…
普段の配信をしているとそんなコメントが読み上げられた。
そう返すとにぱっと笑った。
…好きな人、か。そんな人いないしなぁ…
そんなこんなで話をして私は配信を終わらせる。結局最後の方はバレンタインのネタで持ち切りになった。
実際のところバレンタインに対して私はそこまで興味が無い。小学生の頃は基本1人でいることが多かったし中学の頃など小学生の時よりも1人でいた記憶しかなかった。好きな人など論外だった。
あの2人には私を歌の世界に戻してくれた恩もある。義理、くらいはあげてもいいのかもしれない。
チョコレートが2人宛に大量に届けられている想像をして軽くくすりと笑う。柴崎くんの引きつる顔が容易に想像できた。(染谷くんは、喜びそう、かな?)
先程電源を切ったパソコンを再度立ち上げるとチョコレートのレシピを検索していく。
レシピには聞いたこともないような難しい内容が乗っていてよくわからなかった。結局1時間ほど悩んで母親に電話することになってしまった。
嬉しそうに電話の向こうで話す母親に対して私は軽く頬を染めると、
母親の言葉に薄く微笑むと電話を切る。
その愛情がどんなものであれ私は一生懸命心を込めて作るだけだ。途中がどうなったとしても最後に想いを伝えられればそれでいいのだ。軽く腕に力を込める。
キッチンへ向かうとチョコレートを大量に作り出すのだった。
バレンタイン当日ーー…
席に着くとすっとひよりからチョコレートが差し出される。可愛くラッピングがしてあってつい頬が緩みそうになった。
鞄からチョコレートの包みを取り出すとひよりに向かって差し出す。チョコレート自体は素早く完成できたのだがラッピングに少々時間がかかってしまった。
嬉しそうに笑うひよりを見て私も軽く微笑む。…誰かに自分の作ったものを喜んでもらうのって嬉しいことなんだ。
ひよりのチョコを鞄にしまうと女子のざわめきが聞こえてきた。
その日はいつも以上の大騒ぎだった。朝から放課後までずっと席の近くに女子生徒が大量に来てなかなか休むことすら叶わなかった。
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今回は番外編・バレンタインです
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あとがきであまり書くことがないという事実に気が付きてしまったため今回はこの辺で終わります!ありがとうございました!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。