帰宅の途中にぽつり、と呟く。まさか放課後まであんな騒ぎになっているとは思わなかった。ひよりちゃんは帰りのHRが終わるとバイトがあると先に帰ってしまったので私1人の下校だ。
鞄の中にはあと2つのチョコレートが入っていた。黄色と青のラッピングに2色の花が添えられている小さな、チョコレート。
…あの2人に、渡す予定だったはずのもの。
少し寂しい気持ちになったが1個くらいなくたって対して変わらないだろう。…あんなに、たくさんの女子から貰っていたのだ。そう考えていると、この前のお母さんの言葉が心に過った。
「なにごとも愛情が大事なのよ。」
…私は、どんな想いでこのチョコレートを作ったのだろう。あの2人にも喜んで、欲しくて。感謝を伝えたくて。ただ、それだけしか考えていなかった。あのに、渡さなくていいのだろうか。
私は、今来た道を反対方向、スタジオへと向かうのだった。
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夜ーー…
仕事が終わり、LIP×LIPの2人がスタジオから出てくる。
楽屋の扉に手をかけ中に入ると、そこに1人の人物がいることに気がつく。
椅子からゆっくりと立つと鞄を持って2人の前に移動する。そして、
す、と2人にチョコレートの包みを差し出す。その行為に一瞬2人が目を見開く。
そう。通常の女子なら楽屋に入るなどほぼ不可能だ。だけど、私は一応芸能事務所に所属していた。そのため少しの説明は必要だったがスムーズに入ることが出来た。
少し頬を赤らめながらも言葉を伝える。
最初はびっくりしたような表情を浮かべていた2人だがクッと急に笑い出す。私は少しびっくりして顔を上げる。
口を抑えながら可笑しそうに笑う2人を見て急激に恥ずかしくなる。頬を膨らませながらそっぽをむく。
しばらくの間可笑しそうに笑っていた2人だがふと、頭に手を乗せてきた。
それは、学校での笑顔とは違う、2人の本当の微笑みなような気がした。
その2人の笑顔が何故かとても嬉しくて、気付いたら私も笑っていて。
そんな、幸せなバレンタインは過ぎていったのだった。
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番外編・バレンタイン見ていただきありがとうございました!
深夜に思いついて書いたものなので文章等がごっちゃになってる可能性もありますが楽しく書くことが出来ました。
本編もそろそろあげたいと思っているので見ていただけると嬉しいです!
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。