第14話

私は、ブスだから
826
2022/11/11 05:00
まずは化粧水で保湿して、下地から。

当日は暑いだろうから化粧崩れ防止ベースからしっかりとしなければならない。

そのうえからクッションファンデを塗る。

校則を気にしないで色々使えるのはいいなぁ。
ワクワクする。パウダーをはたきながら、ついニヤニヤしてしまう。
柊木 来夏
夢瑠、嬉しそうだね
田中 夢瑠
うん、来夏に思いっきりメイクできるの楽しいよ
鼻筋にシャドウを入れる。
この前買った筆、かなり使いやすい。シェーディングを重ねると、来夏の小顔がさらに際立つ。
田中 夢瑠
来夏、ギャルメイクのときにカラコンも買ってたよね?
このメイクだとブラウンが馴染むからそれつけてみて
アイブロウはイエベに合うオレンジ&ブラウン。色を混ぜながら書いていく。
ブロウマスカラで眉毛は柔らかいオレンジめの色付けに。

次はアイメイク。パレットで一番明るい色をまぶたに乗せる。パール感が強いけど、決していやらしさはない。暗い色をとったら重ねて影を作る。
発色が良くて、すっごく可愛い!

グリッターイルミネーションライナーで目頭にも光を入れる。
これで目の幅も大きく見える効果がでてくる。
ジェルライナーを使って、アイラインはこれでOK。

マスカラで睫毛をもっと美しく整える。リップはマットなレッド。

色を乗せてわかる大正解さ。
仕上げにチーク、ハイライト。
田中 夢瑠
……ごめん、最強に可愛いかも
来夏に鏡を渡すと、おそるおそる鏡を覗いた。
柊木 来夏
――なにこれ!? わたし? わたしだよね?
震える指でほっぺたに指を置いたりして、確かめている。
田中 夢瑠
イエベに合う夏らしくて、少しだけ大人っぽいメイクを意識したんですけど……想像以上に可愛すぎます
柊木 来夏
夢瑠。すごすぎるよ……こんな風になれたらいいなっていうのが、全部詰まってる。ありがとう。これなら自信を持って応援に行けそう!
別人になったわけじゃない。
でも、これだけ来夏が気に入ってくれたなら、当日のメイクはこれで決まりかな。
柊木 来夏
ねえ、夢瑠は当日のメイクどうするの?
田中 夢瑠
……私は、日焼け止めだけ塗っていきます。化粧しても……ブスだから……
柊木 来夏
――はぁ? なに言ってるの? 夢瑠、鏡見たことある?
田中 夢瑠
メイクの練習だって頑張ったんですから、そりゃありますよ。
それこそ、嫌になるほど……来夏と違って、私はブスなんです
来夏は鏡を置いて、私の方に体を向けた。
柊木 来夏
前から思ってたけど、夢瑠は変な勘違いしてない?
長い前髪と厚いメガネでわかりにくいけど、どーみたって可愛いんですけど?
――来夏はなにを言ってるんだろう?
田中 夢瑠
気を使わないでください。
背も低い、目の幅もなくてちょこんとあるだけ。
鼻なんて低いし、輪郭もまるっこい。
全部来夏の反対にあるような顔です
柊木 来夏
身長は小柄で可愛い。
男子が守りたくなるような感じで羨ましいよ。
目も横に長いんじゃなくて丸くて大きい。
少女マンガに出てきそうな顔だもん。
美人というか、ほんとうに可愛いアイドルみたいじゃね?
来夏から見た私ってそんな風に見えてるの? 来夏って視力低い?
不思議な気持ちで聞いていると、来夏は怪訝そうな顔をしていた。
柊木 来夏
夢瑠は、なんで自分のことをブスと思うんだ? もし平気なら、理由を教えてほしい
胸がチクリと痛む。でも、来夏になら話してもいいのかもしれない。
田中 夢瑠
来夏が聞きたいのなら……。私、ずっとブスって言われ続けてきたの
――ずっと秘めてた。昔の記憶……。

プリ小説オーディオドラマ