第27話

俺を撃っていけ
488
2020/08/21 15:55



side : S.Coups



会議から2日経ち、話し合いは進展しないまま今に至る。

そろそろ本当にどうにかしないと…と思っていた矢先、ホシからメンバー全員のグループトークにカトクが入り、その内容に思わず足が止まる。

エスクプス
『これからスタジオに集合!
byホシ&あなた』
って…なにこれ?ウジヤ、なんか聞いてる?
ウジ
いや、俺もなにも…この間の会議の時もなにも言ってなかったし…


ちょうど運動を終えたウジと合流したところで、このカトクだ。
なにもピンとこないまま、とりあえずそのままの足でスタジオへ向かった。

その道中、同じくなにも聞かされていない様子のメンバー達がちらほらと集まり、あっという間にホシとあなたを除いたメンバー全員が集まった。

エスクプス
みんな、なんか聞いてる?
ジョシュア
なにも…なんだろうね、話し合いするにしてもスタジオっておかしいし…
スングァン
タイミング的に多分所属グループの話?
ホシヒョンが一緒ってことはパフォチに入るつもりなのかな…絶対ボカチがいいと思うのに…
ディノ
とりあえず入ってみる?


電気のついているスタジオには、うっすらと人影がうつる。

先頭に立ち扉を開くと、そこには───









あなた

みなさん!集まってくれてありがとうございます!

ホシ
急に呼び出してごめんね!
今日は俺からみんなに伝えたいことがあります!


スタジオの真ん中に、不自然に間隔を開けて、ホシとあなたが立っていた。

その姿はどこか不自然に見えるけれど、何かを思い出させるようだった。


ホシ
あなたは、パフォチに入ります!
エスクプス
えっパフォチに?!
そんな勝手に決められても…!
あなた

意見のあるメンバーは、これを見た後にお願いします!!

エスクプス
あなた…??


そういうと、あなたがスマホを操作し、スタジオに聞きなれたイントロが流れ始める。



この曲は………

そうか、なんとなく既視感のあった立ち姿は、これだったのか。


並んで立っていたホシが軽い身のこなしで後ろに下がると、まるでステージから勢いよくせり上がってきた時のように、あなたが大きくジャンプをした。

着地をしてこちらを一瞥した眼は、まさに、"虎"が乗り移っていた。



( Bring it だ……)



ホシのパートを、あなたが踊っている。

まさに獲物を狩る時の、虎視眈々とこちらを睨む眼差し。

余裕を持ってゆっくりと立ち上がり、キレのいいダンスを、俺たちが唖然と見つめる中で、まるでホシが憑依したように踊る。

圧倒されるその迫力に、俺たちは言葉が出ない。

ウジのパートを引き受けたホシは、いつもとは違う表情であなたとハイタッチを交わし、まるで何年も前から一緒に踊ってきたかのようなコンビネーションを見せつける。

サビのステップは一切のブレがない。
息のあった、力強いダンスは、数分のパフォーマンスを一瞬のように感じさせた。




あなた

はぁ…はぁ……どう、でしたか

ホシ
…昨日、あなたと少し振りを合わせて、準備したんだ。
説得するより、見てもらう方が早いんじゃないかと思ってさ
エスクプス
昨日、合わせただけでここまで踊れるの?
あなた

…はい!僕は、やっぱり、踊ることが大好きです。
クプスヒョンも、ウジヒョンも、みんなも…チームに誘ってくれて、本当に嬉しかったです!
…でも、僕は、自分の正直気持ちを話せないでいた…みんなに遠慮してた。
僕は、本当は、パフォチに所属したいです!!

ホシ
俺からもお願いします!
  

あなたの視線はまっすぐ、俺たちメンバーを見つめていた。
強く、優しいその眼差しに、遠慮も嘘もない。

これは、折れるしかないみたいだ。

エスクプス
…わかった。明日、俺から社長に伝えておくよ。
たくさんわがままいって、あなたのこと困らせてごめんね?
あなた

…!!ありがとうございます…!
僕も一緒にいきますね!!



ぱっと顔を輝かせたあなたに、メンバーが駆け寄る。
もみくちゃになりながら飛び跳ねる姿は、もう完全に"SEVENTEEN"のあなたの顔をしていた。





あなた

あ、あとミンギュヒョン、この後時間大丈夫ですか?

ミンギュ
え?!あ、うん、大丈夫だよ!



(あなた…?)


祭りのごとく騒ぎ出したメンバーの中で、2人の会話だけが妙に意味深に聞こえて、少し気になってしまった。








解散したあと、カトクにあなたから短いメッセージが入った。



『今日はミンギュヒョンの部屋に泊まるので、戻りません。』









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