side : S.Coups
会議から2日経ち、話し合いは進展しないまま今に至る。
そろそろ本当にどうにかしないと…と思っていた矢先、ホシからメンバー全員のグループトークにカトクが入り、その内容に思わず足が止まる。
ちょうど運動を終えたウジと合流したところで、このカトクだ。
なにもピンとこないまま、とりあえずそのままの足でスタジオへ向かった。
その道中、同じくなにも聞かされていない様子のメンバー達がちらほらと集まり、あっという間にホシとあなたを除いたメンバー全員が集まった。
電気のついているスタジオには、うっすらと人影がうつる。
先頭に立ち扉を開くと、そこには───
スタジオの真ん中に、不自然に間隔を開けて、ホシとあなたが立っていた。
その姿はどこか不自然に見えるけれど、何かを思い出させるようだった。
そういうと、あなたがスマホを操作し、スタジオに聞きなれたイントロが流れ始める。
この曲は………
そうか、なんとなく既視感のあった立ち姿は、これだったのか。
並んで立っていたホシが軽い身のこなしで後ろに下がると、まるでステージから勢いよくせり上がってきた時のように、あなたが大きくジャンプをした。
着地をしてこちらを一瞥した眼は、まさに、"虎"が乗り移っていた。
( Bring it だ……)
ホシのパートを、あなたが踊っている。
まさに獲物を狩る時の、虎視眈々とこちらを睨む眼差し。
余裕を持ってゆっくりと立ち上がり、キレのいいダンスを、俺たちが唖然と見つめる中で、まるでホシが憑依したように踊る。
圧倒されるその迫力に、俺たちは言葉が出ない。
ウジのパートを引き受けたホシは、いつもとは違う表情であなたとハイタッチを交わし、まるで何年も前から一緒に踊ってきたかのようなコンビネーションを見せつける。
サビのステップは一切のブレがない。
息のあった、力強いダンスは、数分のパフォーマンスを一瞬のように感じさせた。
あなたの視線はまっすぐ、俺たちメンバーを見つめていた。
強く、優しいその眼差しに、遠慮も嘘もない。
これは、折れるしかないみたいだ。
ぱっと顔を輝かせたあなたに、メンバーが駆け寄る。
もみくちゃになりながら飛び跳ねる姿は、もう完全に"SEVENTEEN"のあなたの顔をしていた。
(あなた…?)
祭りのごとく騒ぎ出したメンバーの中で、2人の会話だけが妙に意味深に聞こえて、少し気になってしまった。
解散したあと、カトクにあなたから短いメッセージが入った。
『今日はミンギュヒョンの部屋に泊まるので、戻りません。』
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!