第12話

ウジのレッスン
579
2020/07/20 09:44
数日後…
ウジ
ほらあなた!腕の位置違う!もっと肩から伸ばして!もう1回!
あなた

っはぁ、はぁ、はい!!!

スングァン
鬼だよあれ…あなた産まれたての子鹿みたいに足プルプルしてるよ…
バーノン
頑張ってるなぁウリマンネ
スングァン
他人事すぎない?止めるべき?ウジヒョン完全に鬼コーチモードだよ
バーノン
んー……ヒョンなら大丈夫なんじゃない?よく分からないけど
スングァン
適当すぎるよも〜〜大丈夫かなぁ…
全体練習の終わったスタジオには、まだシューズの擦れる音がリズミカルに響いている。
それの合間に聞こえる、鬼コーチ…もといウジの力強い指導の声と、私の絞り出したような、けれど力強い返事。

私もトレーナーさんに筋力トレーニングとダンスレッスンを受けたあとだったが、丁度練習の終わったウジからカトクにメッセージが入り、今に至る。

私も疲れてはいるが、ウジはもっと疲れているはずだ。なんせ、数ヶ月後に行われるカムバックステージの、思い出し稽古だったのだから。
よりにもよって、とてつもなくエネルギー消費の高いHITを集中的に練習していたらしい。

そんな中私の練習を見てくれているのだから、どれだけしんどくても手を抜くわけにはいかない。

そんな気持ちでぶつかった練習は、1時間以上に及び、とうとう体に限界が訪れた。
ウジ
よし、あなたお疲れ様。
すごくよくなったよ。ただ筋力が足りないと思うから、筋トレメニューを増やして重点的にやるように。
あなた

はい……ヒョン、ありがとうございました…

床に倒れ込んだ私を、心配そうに見ていたメンバー達が恐る恐る覗き込む。
ホシ
大丈夫?かっこよかったよ〜明日は筋肉痛酷いと思うけど…
ホシがそう言いながら私に向けて手を合わせ、参拝するときのように礼をする。日本を愛してくれているだけあってその作法は美しいけれど、なぜ拝まれているんだろう。
ウジ
ホシ、新曲のことでちょっと相談あるからあとで部屋に来て
ホシ
おん!分かった
(いやこの練習のあとで更に新曲の打ち合わせ…?!)

というか、そんな大事な用があったのに練習を見てくれていたの?
あなた

ウジヒョン!忙しいのに練習見てくれてありがとうございました…!

ウジ
いや、こちらこそいい息抜きになったよ。
また少し力を貸してほしいから、カトクするね。今日は本当にお疲れ様。ちゃんとご飯食べてね
あなた

うっ……とうとい……

ホシ
とうとい?大丈夫かなぁ、なんかよく分からないこと呻いてる…
ウジ
あはは!大丈夫、尊いね…w
本当、面白いな
ウジは楽しそうにタオルで私頭をわしゃわしゃと拭くと、ホシと連れ立ってレッスンルームをあとにした。
スングァン
大丈夫?立てる?
あなた

はい…もう少し、待ってもらえれば…

正直、意識が飛んでしまいそうだった。
きっとアドレナリンで踊り続けていたんだろう。1度気を抜いてしまうと、うまく力が入らなくて、眠い。
ミンギュ
えっ、本当に大丈夫?おーい、あなた!おーい??
遠くでミンギュが私の名前を呼んでいるのが聞こえる。

ゆっくり意識が遠のく中で、ステージに立ってキラキラ輝いているミンギュが、私に手を伸ばしていた。

ああそうだ、あれは、初めて友達に誘われて行ったライブで、奇跡的にファンサを貰って……

その日から、私は彼らに夢中になったんだ。







あなた

ん………?あれ?ここどこ………

目を覚ますと、そこは見覚えのない部屋だった。

部屋の間取りはほとんど変わらないけれど、匂いと雰囲気が全然違う。
あれ?私そういえば昨日、どうやって部屋に戻ったんだっけ……
あなた

クプスヒョン…?


不安げな声でリーダーの名を呼ぶと、

ミンギュ
おはよ、あなた
そこに居たのは、笑顔のミンギュだった。

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