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第1話

余命宣告
478
2021/01/28 22:03


お葬式の朝。


親族たちが皆、棺の中に花を入れていく。


自分の番が回ってきて、
葬儀社の人から花を受け取り、
棺の中を覗き込む。


その瞬間、目を疑った。


なぜなら、そこに入っていたのは
私の彼だからだ。


え、なんで琉輝るきが?
どうして?


そう頭が混乱するなか
夕蘭
夕蘭
琉輝……っ!

彼の名前を必死に泣き叫ぶ。


その直後、ぴかんと急に眩しくなる視界。


眼底まで眩ませる強い光にうっすら目を開けると、
目の前に広がるのは白い天井。


ここはいつもの病室だった。

看護師
看護師
あ、夕蘭ゆらさん起きられましたか?
夢にうなされていたので
少し心配になって

朝の食事をテーブルに置きながら、
看護師さんが心配そうな顔をする。
夕蘭
夕蘭
すいません……大丈夫です

あぁ、今日も。
この病室に琉輝の姿はない。


こんな夢ばかり見るのは、
琉輝に会えなくなってからずっとだ。


ちなみに、琉輝とは付き合って3年になる。


春には二人大学を卒業して、
結婚する約束も交わしていた。


それと同時に、私は体調を崩すようになった。
デート中にも気分が悪くなることが増え、
心配になった私は病院で検査を受けた。


検査結果は乳癌。


それも身体のあちこちに転移しており、
手術しても治療は不可能だと言われてしまった。


その事を伝えると、
琉輝は受け止めきれない様子で
崩れるように床に座り込んだ。


その姿に溢れ出しそうな涙をぐっと堪えて、
唇が震えながらも琉輝に視線を向ける。

夕蘭
夕蘭
私ね、残りの命長くてあと3ヶ月なんだって。

本当は言いたくなかった、
悲しませたくなかったから。


でも、未来の幸せを考えるなら。


このまま私と一緒にいるべきじゃない、
だから。
夕蘭
夕蘭
……別れよう、私たち。


そう考えて出した決断に


琉輝
琉輝
少し時間が欲しい。



そう琉輝に言われてから、今日で2週間。


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