階段に足を投げ、屋上の扉によっかかり呟く。
ここなら誰も来ないだろう。
バッドエンドな俺の人生。
みんなから愛された姿は全て演じた姿。
友達がいても信じて貰えない。
そして、終いは参考にさせて!かよ…
背中を支える物が無くなり、俺は後ろに倒れる。
ガンッという音と一緒に頭を打ち付ける。
青空と一緒に誰かの影が見えた。
「何やってんの…」と引かれ気味に言われて、俺は空を見たままその影を知っている人物に当てはめると返事を返す。
笑い声と共にカシャッと音が鳴る。
どうせこんなことを言ったところで虎雅が写真を消してくれないのは分かっている。
普段、俺と話さないから何も知らない睦希が不思議そうに首を傾げる。
無能な自分が情けなくて笑えてくる。
そんな気持ちを抑えるように俺は瞼を閉じた。
あのまま、もしるーと小学校を卒業出来たなら、いじめを受けていたとしても周りから馬鹿にされても俺はハッピーエンドと言えた。
でも、結果は何も知らなかったせいでるーが追い詰められて自殺に走ったバッドエンド。
驚く答えに俺は起き上がって睦希を見る。
今の言葉の何処か間違っているのか分からない。
意外だ、まさかAランクの奴の口からそんなことが聞けるとは思わなかった。
他の奴らは友達がいるって言ったら笑うのに…
笑うどころか普通に学校が違うだけじゃないのか、って言ってくるなんてな…
暴力ヤンキーって言いたくなるがそんなことで殴られるのはごめんだと思い、曖昧な表情で返す。
そんな俺を見て呆れたような表情を浮かべるが、とくに怒った様子は無かった。
話が前に龍弥さんが言っていたことになり、俺の心は小さくガッツポーズを決めていた。
冗談でそんなことを言ってみる。
僕のお願いを聞いてくれるのは何か虎雅のお願いを叶えると約束した時だけだから無理なのは…
虎雅がすんなりと了承をくれると逆に何か怖い。
虎雅がそこまで言うのか…
そう言って虎雅が階段を降りようとした時、後ろからついて行こうとしていた睦希が立ち止まって振り返り、俺を見た。
言うか言わないかを迷う様子を見せる睦希。
少し悩んだ末、睦希は顔を上げた。
今度こそ2人がいなくなって1人になる。
閉まった屋上の扉にもたれて、無意識にポケットに入っているスマホを握り締めた。
別に違うなら違うって言っていい、か…
クラスの異変に気がついて、物事に対する考え方が変わった?みんなが口にしないだけで絶対にクラスが変なことはみんな気付いているはず…
何とも言えないモヤッとした感情に溜息を零す。
相変わらず、このモヤが気持ち悪い。
睦希は前まであんなことを言う奴では無かった。
冷たい目で俺の悪口を言うような奴。
今もこの瞬間、虎雅と言ってる可能性もあるが、少なくとも俺に対してさっきみたいなことを言うのは今までに一度も無かった。
呪い……呪われて……呪って………
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。