高校見学に誘われて俺は琉依と女子高に来ていた。
他にも女子中学生が来ている訳だがまぁ何か煌めいているって言うか…やっぱり好きになれない。
琉依の気持ちも分からなくはない。
確かに揉め事を起こさない為には別々の高校に通って放課後に会うことが1番だと思う。
俺は俺で女子高嫌だ、なんて言ってはいるけど…共学に行けば揉め事が起きまくるのは確実。
女子からの嫌われ度ぶっちぎりの1位になる。
それじゃあ、俺に平穏な生活は訪れない。
そう考えると女子高に行くのも1つの手段か…
琉依に聞こえないようにポツリと呟く。
一緒に世間を賑わした唯我だって高校は行くはず。
アイツは何処を選ぶ?そもそも今どうなっ ────
峰本沙月、その名前に思考を止めた俺は声がした方に顔を向けた。
2人の喋る女子の向こう、前に見た写真と全く同じ顔の奴がパンフレットを見ながら親と話していた。
るーを追い詰めた主犯の1人。
そいつがこの学校にすると言ったら、もう他に考えることはない。
女子高なんて嫌だけど、峰本がいるなら話は別。
殺す為にも近付かなきゃいけない、それなら嫌でも同じ学校に通うのが1番近付きやすい。
無事に終われば転校しちゃえばいいし。
拓哉も颯斗には申し訳ないけど…2年の夏までに終わらせられたら秋の試合は俺も行ける。
本来はこんな風に決めたらいけない。
ちゃんと進学先、環境、施設、通いやすさといったいろんなことを考えるべきだけど…本当に何処の学校にいようが行きたいとこ行けるしどうでもいい。
琉依も話を聞いたら成績優秀らしいから私立だし、2人とも入学出来るだろう。
パンフレットを貰い学校を出ると、家に向かう琉依に俺はついて行った。
颯斗の家はヤバい組なだけあって漫画に出てくるような和風の豪邸だし、朔は言うまでもない。
それに拓哉の家は知らない…となると、普通の友達の家という場所に行ったことがなくて少し興味深い。
変な質問に首を傾げる琉依。
そのまま暫く歩くと、何処にでもありそうな普通の一軒家の前に着き琉依は門を開けた。
普通だ…凄い普通……
奥の部屋から出てきた玲苑が琉依が背負っていたリュックを取ると、俺を見て俺の荷物も取る。
この年齢で同棲?なんて疑問を浮かべているとそれを察した琉依が苦笑を浮かべた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。