第70話

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2020/05/20 11:00
黒崎 柚
ちゃんと結依達のこと見といてもらわないと困るんですけど。
3日目、白い砂浜に青い海。
強制参加で海に来させられていた。
全身日焼け対策でパラソルの下、俺は荷物の見張り。
本を読みながら適度に結依達を見守っている。
井上 澪晴
黒崎ちゃんは泳がないの?
黒崎 柚
泳ぎません。
井上 澪晴
何で?
黒崎 柚
何でって…知ってんだろ…
井上 澪晴
ごめんごめん。
理由としては簡単、疲れるから。
疲れることは嫌いだし、ついでに言うと海自体俺がいると何かと目立つから嫌いである。
黒崎 柚
なら、黙って。本読んでるから。
井上 澪晴
冷たっ……冷たっ!?
黒崎 柚
うるさ…
横を見ると、澪晴が濡れていて、水が飛んできた跡を辿ると大きな水鉄砲を持った百鬼先生がにこにこと微笑んでいた。
百鬼 彪
井上君、まさか生徒にナンパですか?良くないですねぇ…
井上 澪晴
うわっ!ちょっ、うっ、かけんな!!!
黒崎 柚
先生、本濡れそうなのでもう少しちゃんと狙ってください。
百鬼 彪
ああ、ごめんね。
井上 澪晴
おい!コラ!百鬼、てめぇ!!
俺の頼みに百鬼先生が一瞬撃つのを止めた途端、澪晴がパラソルの下から飛び出して百鬼先生の顔面に向かってドロップキックを決めに行く。
百鬼 彪
おっ、手合わせですか?
首を傾け、軽々と避けた百鬼先生は何回も澪晴の顔面に水鉄砲を放ちながら何処かへと行ってしまう。
澪晴も百鬼先生を追いかけ、そのまま消えた。
黒崎 柚
やっと静かに…
蕪矢さん
お疲れのようですね、黒崎様。
黒崎 柚
か、蕪矢さん。いつの間に…
蕪矢さん
今さっきでございます。朔様からの伝言で「結依さんと玲依君がお腹を空かせているようなので海の家で何か食べさせますね」と。
黒崎 柚
アイツら…
蕪矢さん
それにしても若いとは良いですね。百鬼様や井上先生もまだまだ元気で。
黒崎 柚
井上先生はちょっと精神年齢低いかな…
同じように水鉄砲を買った澪晴がキレ気味に百鬼先生と撃ち合いになっているのを見て、俺は溜息を零す。
D組の人はやっちゃえやっちゃえと先生達を応援して笑っているみたいだが、それだけじゃなく他の一般客も先生達を見て笑う。
…ついでに言うと、女の人達は目を輝かせていた。
いつも俺に目立つなっていうわりには今盛大目立ってるよな、澪晴のやつ…
黒崎 柚
…にしても、井上先生と百鬼先生が同じクラスだったなんて驚きです。
蕪矢さん
そうですね。昨晩、百鬼様とお話ししたのですが、彼曰くこのクラスには同級生の弟様や妹様が多くて少し驚いた…と仰ってました。
黒崎 柚
え、そうなんですか?
蕪矢さん
はい。九鬼様、小林様、寄光様、源様、篠原様の御名前を出していらっしゃいました。
黒崎 柚
そんなに…
蕪矢さん
あとは朔様の姉にあたるみつる様もお2人と同級生のようです。
黒崎 柚
朔のお姉さん?
蕪矢さん
今年、成人になりました天喰家長女様です。満様が中学校に通っていらした頃から始まり今でも井上澪晴様は問題児だとよく仰っています。
蕪矢さんの口からポンポン出てくる新事実に頭が追いつけなくなって俺は持っていた本を置く。


えっと、まず虎雅は龍弥さんで…
修哉、はな、涼真、睦希の兄か姉と同じクラス?
てか、満さんに至っては“天喰”なんて名字そうそういないんだから朔の姉って気付くよな?
中学校からの知り合いなら尚更…

アイツ、やっぱよく分からないところで駄目だ……
黒崎 柚
今でも、ってことは?
蕪矢さん
ええ、よく満様は九鬼様のお兄様である龍弥様と井上先生と遊ぶと遊びに行かれますよ。
……ちょっとあとで色々と聞かないとな。
蕪矢さん
では、私はそろそろ…
黒崎 柚
あ、朔に伝言をお願いしていいですか?
蕪矢さん
勿論でございます。何とお伝えすれば宜しいでしょうか?
黒崎 柚
えっと、“朔のやりたいこと、言ってくれれば手伝うから”…でお願いします。
蕪矢さん
かしこまりました。
蕪矢さんがいなくなり、俺は本を手に取って読もうとページを開いたが、少し考えると栞を挟まずに本を再び置く。

結局、報復の話は出来なかった。
取り敢えずはまぁキツくなるまで一人でやろう。


瑛士の報告を受け次第、早めに準備をするか……
漣 玲依
お姉ちゃん!大変大変!!
黒崎 柚
何が?
漣 玲依
友達、沖に流されちゃった!!
黒崎 柚
……は?

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