3日目、白い砂浜に青い海。
強制参加で海に来させられていた。
全身日焼け対策でパラソルの下、俺は荷物の見張り。
本を読みながら適度に結依達を見守っている。
理由としては簡単、疲れるから。
疲れることは嫌いだし、ついでに言うと海自体俺がいると何かと目立つから嫌いである。
横を見ると、澪晴が濡れていて、水が飛んできた跡を辿ると大きな水鉄砲を持った百鬼先生がにこにこと微笑んでいた。
俺の頼みに百鬼先生が一瞬撃つのを止めた途端、澪晴がパラソルの下から飛び出して百鬼先生の顔面に向かってドロップキックを決めに行く。
首を傾け、軽々と避けた百鬼先生は何回も澪晴の顔面に水鉄砲を放ちながら何処かへと行ってしまう。
澪晴も百鬼先生を追いかけ、そのまま消えた。
同じように水鉄砲を買った澪晴がキレ気味に百鬼先生と撃ち合いになっているのを見て、俺は溜息を零す。
D組の人はやっちゃえやっちゃえと先生達を応援して笑っているみたいだが、それだけじゃなく他の一般客も先生達を見て笑う。
…ついでに言うと、女の人達は目を輝かせていた。
いつも俺に目立つなっていうわりには今盛大目立ってるよな、澪晴のやつ…
蕪矢さんの口からポンポン出てくる新事実に頭が追いつけなくなって俺は持っていた本を置く。
えっと、まず虎雅は龍弥さんで…
修哉、はな、涼真、睦希の兄か姉と同じクラス?
てか、満さんに至っては“天喰”なんて名字そうそういないんだから朔の姉って気付くよな?
中学校からの知り合いなら尚更…
アイツ、やっぱよく分からないところで駄目だ……
……ちょっとあとで色々と聞かないとな。
蕪矢さんがいなくなり、俺は本を手に取って読もうとページを開いたが、少し考えると栞を挟まずに本を再び置く。
結局、報復の話は出来なかった。
取り敢えずはまぁキツくなるまで一人でやろう。
瑛士の報告を受け次第、早めに準備をするか……
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。