背後から名前を呼ぶ声が聞こえ、俺は睦希の背後に隠れるように1歩下がる。
早速、危険人物が……
ヨーロッパに行ってるはずの佳奈とその家庭教師をやっている百鬼先生。
睦希が真実半分嘘半分のことを佳奈に返したけど、百鬼先生に嘘が通じているかどうか…
鋭いところをついてくる百鬼先生に佳奈が笑う。
帽子を被って下を向いているが、前からの視線がつばを突き抜けて刺さっている感覚がした。
今は下手な動きは出来ない。睦希の知人で人見知りだと貫くのが最善策だろう。
永遠と俺の話題を出すのをやめてもらいたい。
てか、一秒でも早くこの場から…百鬼先生がいるところから離れたい。
ボソッと低めの声で呟くように言うと、俺は睦希に視線を送ってから百鬼先生の横を通り抜けた。
早足でその場から離れ、近くのコンビニに入ったところで追いかけてきた睦希と合流する。
それに澪晴のことも気になる。
あそこまで嫌悪感丸出しなのは珍しい。
人間だし好き嫌いがあるのは分かる。でも、澪晴は嫌っても本人の前でそれを表情に出すことは無い。
まぁ、興味深い対象ではある。
あの微笑みの裏に何が隠されているのか。今の俺には見えない。
大体のことが分かるこそ、分からないことには普段だと有り得ないくらいの興味が湧く。
百鬼彪先生……時間が空いたらちょっと調べるか?先生に直接聞くのもありだけど…
少しでも涼もうとアイスを買って外に出ると、睦希がスマホを見始める。
横から見た限り、どうやらメモを見ているらしい。
自信ありげな表情の睦希。
人は口だけなら幾らでも言うことが出来る。
肝心なのは実際にその場に立った時だ。
幾ら自信があろうとも、いざ人を傷付けようとしたら余っ程の事情が無い限りは人間は躊躇するもの。
躊躇をしたら相手がこっちに気付いて終わり。
殺すか記憶に残らないくらいに動転させない限りは警察に話がいってお縄。
睦希の覚悟がどれだけあるかはやってもらわないと分からない。
駄目そうだったらその時は……
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。