第98話

十五人目、十六人目 新坂美彩、寄光はな
320
2021/09/18 13:29
黒崎 柚
……。
天喰 朔
どうされました?
黒崎 柚
…いや、特に何かあったわけじゃないけど、今回の定期考査の結果が想像してないものになったから驚いてる。
〈第3回定期考査 5教科500点満点〉
1、黒崎柚 500点
1、寄光はな 500点
3、相澤駿 498点
4、九鬼虎雅 496点
5、源涼真 480点


プールの時に夏休み明けのテストで満点を取る、って話してたけどまさか本当にやるとは…
虎雅もたった2問しか間違えなかったみたいだし…
天喰 朔
上位5名、全員D組の皆さんですね。
???
沖縄合宿が効いたようで良かった。
横から声がしたかと思うと、いつの間にか百鬼先生が立っていて成績を眺めていた。
黒崎 柚
百鬼先生…
百鬼 彪
今回の成績を見ましたが、7月のテストよりも全員が平均点上がりました。黒崎さんのような常に満点の子は上がることはありませんけど。
黒崎 柚
皮肉ですか?
百鬼 彪
いえいえ。素晴らしいことですよ?満点をキープなんてそうそうできることではないですから。天喰君も12位、中々いい点数のものが多かったですね。
天喰 朔
いい点数が多いと言いますか、公民だけが問題ですね。
黒崎 柚
あー…何点だった?
天喰 朔
公民が62点です…
黒崎 柚
合計は?
天喰 朔
462点ですね。
黒崎 柚
……他は満点だったんだな。
天喰 朔
ええ…
寄光 はな
ゆーずー
美彩と成績を見に廊下に出て来たはなは結果を見るなり俺に話しかけてきた。
黒崎 柚
どうしたの?
ここは知らないふりをしといた方がいいだろう。
あのミーシャと俺は無縁のはずだし。
寄光 はな
…えっと、ね〜……
黒崎 柚
……。
何も言うこと決まってなかったんだな…
寄光 はな
……沖縄合宿の成果出たね〜
黒崎 柚
…そうだね。
今の流れじゃそれくらいしか言えない。
人を喜ばす言葉ならいくらでも思いつけるが、本心からの言葉でないと相手に失礼な気がしてしまう。それが例え、嫌いなクラスの人としても。
百鬼 彪
寄光さん、初全教科満点おめでとうございます。
寄光 はな
ありがとうございます〜
百鬼 彪
黒崎さん以外に全教科満点の子が出たのは1年の4回目ぶりだとか。
寄光 はな
ふっふっふっ〜、今回はちゃんと勉強したんですよ〜
百鬼 彪
ちなみに理由は?やはり受験に使う成績表の為ですか?
寄光 はな
ん〜…確かにそれもありますけど〜…
百鬼先生が興味深そうに尋ねる。
こういう人が少しの才能を見せた時の百鬼先生は本当に楽しそうだ。
寄光 はな
……やっぱ、受験ですねぇ…
百鬼 彪
2学期のテストはどれも受験に直結しますから大事にしていかないとですね。
寄光 はな
は〜い。
考えた末、はなはプールの時の話をしなかった。
俺と同じだって言うつもりだったのを何故話しかけたところで止めたのか、想像することは容易。
新坂 美彩
……。
はなの横にいた美彩が何か言いたげにはなを見ているが、その表情は寂しそうで悲しそう。
俺と同じと口にできないはながどうしてそこまで寂しく悲しそうに見えるのか。

…ある程度の推測はできるが、与えられた情報が少なければその信憑性は当然ながら落ちる。
本人や事情を把握している者の口から聞かない限りはそれは不確かなもので、全てを完全に信じることは難しい。
黒崎 柚
…次も、頑張って。
寄光 はな
!…うん。
今の立場の俺に言える最大限の褒め言葉。
上から目線に聞こえるけど、そんなつもりはない。
頑張った人に次も頑張ってと言うのはおかしくないと俺は思っている。















出席番号32、寄光はな。
委員会は無し、美術部。
常に上の中をキープしているが、実際はやる気を出していないだけでもっと賢い。運動神経も良し。
いつも美彩といることが多い。男子だと睦希。
俺に何があっても見ているかその場から去るだけ。
傍観者だからランクはB。

追記
俺を見捨てているという罪の自覚はしている。
いじめる方が悪いということも分かっている。
理由によってはランクをCに下げることを検討。


出席番号20、新坂美彩。
図書委員会、美術部所属。
成績は上の下、運動は普通よりかは少しできる。
はなとよく一緒にいる。はなと同じく男子だと睦希が一番仲のいい印象。
本性は知らないが、見ている限りでは良い子。強いて言うなら人に流されがちな気もする。
傍観者か去るからランクはB。
はなと美彩なら接点のある睦希に手伝わせたいところだが、流石に仲のいい友達を自ら手にかけさせるのは申し訳ないし、俺だけでやるか…睦希には話だけ聞いてきてもらっ──────
辻井 陸
柚!前見ろ!!
黒崎 柚
っ!
報復に頭を回し過ぎていた俺はちゃんとその罰を受けるように顔面にバレーボールを食らった。
踏み留まろうと思ったが、本当に突然のことだった為にそのまま後ろに倒れ後頭部を強打した。
黒崎 柚
はぁ…
手をついて立ち上がろうとするも指が髪ゴムに引っかかり立ち上がった時には既に髪が解けた後。
……自分の運の悪さが嫌になる。

鼻がヒリヒリして触ってみると、その手には赤い血がついている。鼻血が出てるらしい。
黒崎 柚
……顔、洗ってきます。
それだけを言って俺は早歩きで体育館の外へ。
水で鼻血を洗い流しながらまたぼんやりと考える。
ここ最近の俺は少しおかしい…
ただランクに沿った報復をするというだけなのに、何をこんな躊躇しているんだ…
鼻血は止まらない、だが保健室に行く気にはどうしてもなれなかった。
しゃがんで蛇口から流れ落ち続ける水に指を突っ込み鼻を拭う。
どうすれば…
新坂 美彩
柚も突き指?
黒崎 柚
!…ただの鼻血。
突き指をしたらしく冷やしにやってきた美彩はそんなことを俺に尋ねながら赤くなっている指を水で冷やし始めた。
新坂 美彩
え、保健室は?
黒崎 柚
そのうち止まるからいい。
新坂 美彩
そう…長い時間止まらないようだったら行った方がいいよ。
黒崎 柚
…うん。
新坂 美彩
……。
黒崎 柚
……。
それを話してからは沈黙が続く。
今思えば、美彩と2人っきりになったことがない。
…まぁ他の人と2人になっても大体は無言になるか、いじめられるかの二択だけど。
新坂 美彩
……そろそろいいかな。
蛇口を締める音、2つあった水の音が1つになる。
遠ざかっていく足音を聞いていると、それが急にピタッと止まる。まだ体育館まで着いていない。
不思議に思って顔を上げると美彩が途中で止まって指を触りながら何か考えている。
黒崎 柚
?…美彩、何で行かな────
新坂 美彩
ごめん。
黒崎 柚
えっ?
新坂 美彩
…うん。ごめんね、柚。こんな私で。
何かを誤魔化す、そんな笑みを浮かべてそう言うと、美彩は前を向き体育館へと戻って行った…

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