それからずっと澪晴達の部屋に住まわせてもらって全員分の計画を練った。
予定よりも早く終わったから、俺は5月末には不登校から復帰して久しぶりに学校に来ていた。
登校して来て汚れていない綺麗な机に驚いていると俺に気付いた氷翠と駿が寄ってくる。
本当に2人は俺のこと心配してくれてんだな…
2人が去ってから俺は静かにそんなことを思う。
愛梨達は俺のことなんか全く気にしていないのか、いつも通りくっちゃべっている。
……その時、俺はそれがとても不自然に見えた。
あの物分りが悪いアイツらがそう簡単に手を引くとは思えない。
何か裏があるような気がする…てか、絶対にある。
無かったら脳内で何か異常があったとしか…。
別にどうでもいい。
そのうち、地獄を見るだけなんだから。
俺は鞄を漁ると、机の上に折り鶴を置いた。
考えた計画は証拠として残ることのないように全て記憶した。
でも、万が一を考えてメモは残そうと思って、その残す方法に選んだのが折り紙。
この鶴を開けばあるクラスメイトに対する報復方法が書かれているが、折った鶴を破く人はいてもわざわざ綺麗に開く人はいない。
家の自室には千羽鶴のように紐で繋げといたから、1人が終わる度に鶴を燃やす。
そして、紐だけになったときが報復を完全に終えたということだ。
最初のターゲットは…
出席番号05、奥山颯汰。
サッカー部所属。
いつも一緒なのは入学から同じクラスの辻井陸。
運動部所属なだけあって体育の成績は学年トップレベルで頭も上の中。
性格は元気、燃えやすいとかの熱血系。でも、意外とビビりでジェットコースターが苦手だとか。
ランクはB、笑いまではしないがいじめを見て見ぬふりをして助けようとはしない。
『Bくらいなら事故らせて病院送りにして大好きな運動を奪うのがいいだろう。例えば、サッカー部の奥山颯汰とか。』
澪晴が例に挙げてたし、時期もちょうどいい。
この薊ヶ丘のサッカー部は強いらしく今度大きな大会にも出場するというのを風の噂で聞いた。
大きな大会なら3年生はほぼ確実に出場する。
今はその大会に向けての練習だってのも聞いた。
なら、やることは1つ。
大怪我でサッカーが出来ないようにさせるだけ。
希望を絶つくらいの怪我を負わせる。
サッカー部の試合が来週の土曜…。
なら、対戦校がそろそろ発表される頃か…
なら、俺が今回化けるのは対戦校のサッカー部の中で1番体型が近い人。
そしたら警察は真っ先に対戦校を疑う。誰と特定されなくても俺には動機がないように見えるし。
俺がサッカー部の見学?
んなことしたら、怪しまれるに決まってる。
でも、誰かに聞きに行けば何で?ってことになって怪しまれる可能性があるし…めんどくさ。
あまり乗り気ではないが一番安全な方法を取る為にその日の放課後、俺はサボり魔がいるであろう旧校舎に向かった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!