男だったり女だったり、子供だったり大人だったり…
半端な存在の俺は果たして何者なのか。
昔からずっと考えているが、正解が分からない。
まぁ、もしかしたら“分からない”ということが正解なのかもしれない。
…………………ほんと、俺ってXX。
何だかんだで言いくるめられた俺はお母さんと結依によって浴衣を着せられて、みんなが言っていた集合場所に着いた。
人が多い、そして歩いていると周りの人の視線が異常に集まる…とか精神的ダメージをかなり食らいながらも俺は頑張って零しそうになる溜息を飲み込む。
みんな浴衣で私服だとある意味目立ったかも…
ちゃんとすればいつもよりかなりマシになるのは俺も知っている。
でも、めんどくさいのが本音でちゃんとすれば周りからの視線が集まって何か怖い。
地位は愛梨の方が高い印象があるが、人を引っ張るリーダーシップ的なのは佳奈が1番優れている。
椿が祭りの話を佳奈にしたのは正解だ。
それに仁も虎雅の次に権力が強い、だから男子を集めるなら仁が話に乗ればスグに集まる。
今考えると、椿が勇気を出したから今みたいにいい感じに話が進んで俺がここにいるのか…
祭りなら学校とは違って、個人の会話の内容がより深いものになりやすいはず…だから、何か使えそうな情報が手に入ったらいいけど…
………そうでないと、現在進行形で受けている精神的ダメージの量に合わなくてムカつく。
報復があったとしてもなかったとしても、何でいじめられっ子がクラスの人と旅行に行かなきゃいけないんだろう、とは思う。
こんなことしてる場合じゃないのに…ってさ。
そんなことを前を歩いていた睦希にいきなり言われ、俺は戸惑うしかなかった。
睦希はあの階段で話した時以来、報復を続ける俺の警戒対象に入っていた。
錬のことを知っている睦希がいつ、どの行動を見て俺が錬だと分かるか予測がつかない。
俺が軽く嫌味を込めながら虎雅の背に向けて言うと、虎雅は少し黙って……
と、ポツリと呟くように言った…
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!