麻姫が消えて、代わりの朔。
周りに比べてどこか違う雰囲気の班に溜息を吐く。
朔が特に気にしていないのか微笑んだまま爆弾発言をかまし、班に変な空気が流れる。
ざっくりとした説明をすると、噛み付けばいいのにわざわざパンをちぎって口に運ぶ。
確かに持ち物的にも富裕層だな、こいつ…
いじめの話に対する俺の反応が気になるのか、向かいに座る駿からの視線を感じる。
そんな俺はるーを思い浮かべていた。
でも…と俺は言葉を続ける。
俺がいじめられれば誰かが犠牲になることはない。
全員から嫌われとけば助けようとする人も消えて、るーみたいになることもないだろう。
俺は自分が弱者だと思ったことはない。
平和の為にわざと弱者に成り下がっているだけだ。
心配そうな目で俺を見る駿。
我に返り食べる手を止めると、横に座る朔を見た。
いじめを嫌う駿が少し低い声で朔を制す。
…が、朔は止まらない。
想像以上に賢い…
軽く誘導尋問みたいなことまでやりやがる…
……これは引いたら俺の負けだ。
ご最もな意見に俺は苦笑いする。
呟きは段々と小さくなっていく。
失う辛さを知っているから俺は作れない。
また誰かを失うのが怖い。
今だって拓哉と颯斗を失ったら…と考えるだけで周囲の温度が何度も下がったような気がする。
駿はわざと冗談っぽくそう言った。
でも、その目は本当に心配に思っている目。
何があろうと俺の命に代えてでもアイツらは守る。
昔からその思いは変わらなかった。
それは今も当たり前できっと未来になってもこの思いは変わらない。
陸の言う通り、普段ならこんなに話さない。
そもそも僕が話しかけるなオーラを撒き散らしているし、いつも2人が話しててたまに麻姫がその会話に入る程度。
班全体での会話は初めてだと思う。
3人の会話が始まり、俺は給食を食べ進める。
すると、そんな俺に暇を与えないように朔がまた話しかけた。
何でこんなに話しかけてくるんだよ…
俺がいじめられてるって分かってるくせに……
そんなことを思っていると、ふと脳裏に毎日毎日話しかけんなって言ってたのに執拗いほどに話しかけに来ていたアイツが浮かぶ。
ふいに開けていた窓から吹き込んだ風が女性的に見える朔の髪を揺らした。
あぁ、また思い出した…
朔の質問に俺は無意識にそう返していた……
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。