第95話

カウントダウン
359
2021/03/05 11:00
受験に大切なテストが終わった後、みんながお腹すいたと帰り始める中、睦希が本を返しに来た。
黒崎 柚
どうだった?
篠原 睦希
まぁまぁ。ちょっと難しい話だった。
黒崎 柚
そうか。
報復が難しくなる、か…
篠原 睦希
じゃ。
黒崎 柚
ん。
睦希がいなくなり俺は本を開く。
ページの間には折り畳まれたメモが挟んであった。

【さっき会議室に警察が来ていた。神月って刑事がこの事件の担当刑事らしい。警官が2人常駐するって校長先生と話していた。刑事も捜査以外の時は放課後まで校内にいるとか。】
黒崎 柚
……。
神月と言えば確か…
千歌が芽衣と一緒に事故った時にSweetAngelに事情聴取に来ていたあの刑事だ。
優秀なのかどうかは知らないが、身近に警察がいるということに関しては気をつけるべきか。

それよりも…結果が出たらはなを狙おう。
あの人がどの位置にいるのか分からなくなってきた。
俺の見定めが間違っていたのか、単に睦希のように改心したのか。
九鬼 虎雅
柚。
黒崎 柚
何。
九鬼 虎雅
さっさと行くぞ。
黒崎 柚
…あー、うん。そうだった。
辻井 陸
え、そこって一緒に帰るくらいに仲良かったっけ?
相澤 駿
ちょこちょこ一緒にいるよ。
九鬼 虎雅
別に。
辻井 陸
それ。
相澤 駿
虎雅、お前まさか…柚に変なことしてないだろうな?
九鬼 虎雅
あ?ざけんな。いつも何もしてねぇつってんだろ。ったく、テメェの目に俺はどう映ってんだ…
虎雅は分かりやすく溜息を零す。
会話に入れない俺は睦希から返してもらった本をリュックに入れると話が終わるのを待った。
澪晴が学校から去って、百鬼先生と警察が来て…やはり時間が経つと難しくなってくる。
しかも、来てる刑事は顔までは見せていないが一度は話した刑事。気は抜けない。

はなを準備含め3日ほどで終わらしたらすぐに次の奴に取り掛かるとして…
九鬼 虎雅
おい、柚。
黒崎 柚
…あぁ、話は終わった?
九鬼 虎雅
終わった。
先に行った虎雅について行くが、こいつと一緒に歩いているとまぁ目立つ。
学校一の不良問題児と成績だけは良いいじめられっ子だと接点が無さそうに見えるからかな。

今の時期、D組ってだけで呪われてるだの何だので周りから少し変な目で見られるし。
黒崎 柚
今更だけど、焼肉を制服着たまま食うと臭いがつくな。
九鬼 虎雅
本当に今更な話だ。
黒崎 柚
…まぁ何でもいいか。
焼肉屋に到着すると、虎雅の奢りで食べるわけだが、やはり空気は独特なものになる。
黒崎 柚
…それで?テストは出来た?
九鬼 虎雅
全部埋めたし大丈夫だろ。
黒崎 柚
埋めたらいいって問題じゃないけど。
九鬼 虎雅
勉強したし。
黒崎 柚
適当だな…
呆れ気味に返すと、肉を口の中に放り込み噛む。
焼いた肉はタレと絡まって凄い美味しい。
俺が美味しいと感じる為、生きる為に豚や牛が代わりに死んでいる。
豚や牛にとっちゃ人間は恐怖の対象でしかないんだろうな。ブクブクと太らすだけ太らされたら殺され人間が食べる為の肉になるのだから。


…なんて、考えても結局世の中は食物連鎖で成り立ってるから輪っかになってるか…
食べる為に殺すのは構わないのに、私情を挟むと悪いとされる…都合のいいことだけを見る…
誰かの意思で作られたんじゃないって分かってはいるけど、何がどんなつもりでこの世界を誕生させようと思ったんだろ…
九鬼 虎雅
……お前、何考えながら食ってんだよ。
黒崎 柚
…悪い。
引くような目で見られて俺は謝る。
何でこんなにも虎雅が俺の思考をエスパー並みに組み取れてるのかは分からないが、確かにご飯食べてる時に考えることじゃないってのは正論だ。

焼肉を食べ終わった後、家に帰るためにまずは千代瀬駅に向かった。駅前の人の多さを避ける虎雅は路地を歩いて行き、人混みがあまり好きではない俺もその後をついて行く。

前を見るともうすぐ路地は終わりそうで。
ビルの壁に埋め込まれた巨大なモニターは当たり前のようにD組のニュースを流していた。
黒崎 柚
……あれも見慣れたもんだな…
九鬼 虎雅
あ?あぁ、D組のか。
黒崎 柚
そっ。結局は自分にとって大切な人じゃなきゃ誰が死のうとどうでもいいって感じなんでしょ。
九鬼 虎雅
大人は汚ぇからな。人の死なんか構わず自分の身を優先するクソ野郎ばっかだ。
黒崎 柚
……。
虎雅、両親轢き逃げに遭ったから……
ピッ、ガッガッ…ザアァァァァァッ!!!ブツッ……
突然の音に俺は立ち止まりモニターを見つめる。
モニターはバグが起きた後、砂嵐が起こり、真っ暗になって何も表示されなくなった。…と思うと10秒のカウントダウンが始まり、減る数字の下には『狼へ』と赤い文字が表示されている。
黒崎 柚
ドッキリの広告か?
九鬼 虎雅
……。
黒崎 柚
っ!?
何かが風を切る音がして俺は振り向く。
それは偶然にもカウントダウンが0になった時。
見ると同時にドチャッ!っと嫌な音が響いて落ちてきた何かが真っ赤な液体を辺りに放った。
黒崎 柚
は…?
九鬼 虎雅
何だ今の…おい、柚!!危ねぇ!!!
虎雅に言われて俺は自然と上を見る。
逆光で見えない何かが6階建ての建物の屋上から俺目掛けて落ちてきてて、それはもう避けるのには間に合わないくらいに俺と近かった…



















黒崎 柚
……。
意識が戻ると俺は路地の壁を背にして座っていた。
目の前を通り過ぎる青い服の人達、ドラマとかでよく見る鑑識の人。
動こうとしたけど、体が痛くて上手く動かない。
そんな体を無理矢理動かして立ち上がった俺は沢山の声がする方を見る。
黒崎 柚
っ…
見たのは警察官と野次馬、立入禁止の黄色テープ。
逆方向を見ると奥が見えないようにブルーシートが張られていた。


確か、あの奥には誰か…


警察は野次馬、鑑識は自分の仕事に忙しくて誰も俺のことを気にしていない。
俺はリュックを持つとブルーシートの方へと歩き、勝手にその奥へと入っていった。

ブルーシートの奥はさっき俺が見たように血が辺り一面に飛んでいる。
鑑識が飛散した死体の現場検証を続ける中、手前に神月刑事と虎雅、そしてもう1人薊ヶ丘の制服を着るボロボロの男子生徒を見つけた。
神月さん
!…体調はどうですか。
黒崎 柚
…全身激痛ですよ。何があったのかを説明していただきたい。
男子
ゆ、ずちゃ…ごめん…!僕のせ…
薊ヶ丘中学で俺のことを下の名前ちゃん付け、一人称僕の奴なんて1人しか知らない。
黒崎 柚
采斗…
宮田 采斗
怪我、させ…ごめ、ん…っ…
黒崎 柚
僕的には采斗のそのボロさの方が心配なんだけど何が…って、怪我させてってことはまさか…
采斗が俺の上に降ってきたってこと…?

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