第28話

子供らしさ
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2020/01/02 11:23
るー
錬って精神年齢高いよね。
黒崎 錬
は?いきなり何。
るー
何となく?小学生のくせに子供らしいこと言ってんの見たことない。
黒崎 錬
子供らしいこと?
るー
駄々こねてみたりとか、喧嘩で泣いたりとか。…まぁ、錬に至っては泣いてるところさえ見たことないけど。
黒崎 錬
自分で欲しい物は買ってるから、駄々こねる意味無いし。それに遊ぶ友達もいないから喧嘩も無い。
るー
泣かないのは?
黒崎 錬
元から。泣いて状況が変わるなら目が腫れるくらいまで泣いてやる。
るー
ふ〜ん…
俺の答えにるーは首を傾げた。
今の答えの何を疑問に思ったのだろうか?
るー
じゃあさ、じゃあさ。
黒崎 錬
何。
るー
友達が消えたら泣く?
黒崎 錬
不吉なことを言うな。
るー
いいから。
黒崎 錬
多分……泣く、かも?分からない。感情で泣いたことないから。
るー
私は?
黒崎 錬
るーって友達なの?
るー
逆に錬の友達の定義って何?
黒崎 錬
友達の定義…
そう言われて、俺はスグに答えが出せなかった。
理由は簡単、友達がいないから。
黒崎 錬
…分からない。いつか分かったらるーに教えるよ。
るー
楽しみにしてる。もしその定義に私が当てはまったら"友達"って言ってね。
黒崎 錬
うん…。
るー
ついでに!私が消えたら泣いちゃう?
黒崎 錬
さぁ……分からないな…。
今度は答えを聞いてるーは笑った。
黒崎 錬
何が面白いの?
るー
だって、泣かないって言われるよりも分からないって言われた方が嬉しいじゃん。
黒崎 錬
そうなんだ…
るー
うん。錬もいつか分かる日が来るよ。友達も出来て答えは見つかる。不幸があるなら幸せもきっとあるよ。
『不幸があるなら幸せもきっとあるよ。』
そう言った10歳のるーが1番大人だと思った。
俺には分からないことをるーは知っている。
俺にとっての不幸は全て。
…でも、可愛い弟達や妹がいるのは幸せ。
いじめを受けようともこの身がボロボロになっていくとしても絶対にあの子達とお母さんは俺が守ってみせる。
あのジジイに負けやしない。
るー
錬。
黒崎 錬
ん?
るー
唯一無二な友達、出逢えるといいね。
その時、目の前の景色が一気に変わった。
変わった先は自分の部屋で俺の目の前に一つのバスケットボールが転がっている。
黒崎 錬
……。
お母さんに貰った兎のぬいぐるみを持ちながら、転がっているバスケットボールに手を伸ばす。


触れたと思うと、突如腹に強い力が加わった……

























黒崎 柚
うっ……
漣 悠翔
危ないだろ?
漣 結依
だって寝てるんだも〜ん!
目を開けるとお腹に馬乗りで乗っている結依の姿が目に入った。
漣 結依
柚姉!おはよ!
黒崎 柚
おはよ…
何だ、夢か……
確か帰って来て部屋着に着替えて、リビングで菓子を食いながら悠翔と喋ってた気がするけど……
黒崎 柚
…玲依はどうした?
漣 結依
先にお風呂入っちゃった。もうすぐ来ると思うよ!
黒崎 柚
そっか。
すると、リビングの扉が壁に穴を開けるようなくらいの音を立てて物凄い勢いで開く。


そこには風呂を上がって急いで来たのか、髪が濡れたままの玲依が立っていた。
漣 玲依
玲依ここに参上!!!
漣 結依
ほら来た!
結依が俺から降りて、菓子がある机に近寄る。
ソファから2人を見ていたが、スグに同じ菓子を選んで喧嘩になっていた。
黒崎 柚
2人とも、喧嘩しない。
漣 玲依
だって、結依が譲ってくれない!
漣 結依
前は玲依が食べたじゃん!
漣 悠翔
半分にしたら?
黒崎 錬
そうだよ、半分にして2人とも食べたらいいじゃん。
漣 玲依
………どうする?
漣 結依
……別にそれでもいいよ。
漣 悠翔
ちゃんと半分ね。
少し心配になったのか悠翔が2人の間から菓子を取ると、真ん中で分けて2人に渡す。
笑顔で食べる姿を見る限り、何だかんだでこいつらはやっぱり仲がいいのだろう。
黒崎 柚
こういうのが、か…
漣 悠翔
何が?
黒崎 柚
子供らしさ。昔、あいつに子供らしさが無いって言われたの思い出した。
漣 悠翔
あ〜…何か分かるかも。俺と今みたいに食べたいお菓子が被った時とかいつもスグに譲ってくれてたし。
黒崎 柚
最近になっていきなり"記憶の本"が埋まるようになって驚きしかない。
俺の場合、記憶は全て本のようになっていた。
頭の中が図書館みたいになっていて、その中から必要な情報が書いてある本を選んで見る。
情報を得れば得るほど本の量は増えていった。


だが、あの日をきっかけに1番大切な本が汚れた。
それが"記憶の本"。
書いてあるのは豆知識や学校のことでもない。


俺の人生について。


事実は書いてあるが、肝心な内容が分からない。
るーと出会い、別れた事実。
あいつらと友達でいることの事実。
それは分かるのにどうやって出会ったのか、どんなことをしたのかそれが空白のようにまるっと抜けていて思い出せない。
………中には家族との思い出も抜けていた。


本が埋まる方法はひょんなことから思い出すか、夢で見て思い出すかの二通り。
漣 悠翔
良いことじゃん。
黒崎 柚
うん。このまま全部埋まって思い出せるといいけど…
漣 悠翔
俺との約束も早く思い出してよ。
黒崎 柚
いや、思い出そうとはしてるけど…
昔…俺が錬だった頃、俺は悠翔と何かを約束した。
約束した時の光景は覚えているけど、何を約束したのかが思い出せない。
黒崎 柚
別に教えてくれてもいいんだよ?
漣 悠翔
姉さんが思い出すまで俺は言わない。
ハッキリと言われて俺は肩を下げる。
漣 悠翔
姉さん、俺は姉さんが思い出すまでずっと待つから。大人になってからでも大丈夫だから安心して。
黒崎 柚
………そう言われると尚更、頑張って思い出さないと…。
謎のフォローが少し痛くて悠翔から目を逸らす。
目を逸らした先にはテレビがあって、七夕まであと何日と言うカウントダウンをしていた。
七夕、ねぇ…。
こういうイベントは利用出来るかも……

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