第24話

五人目 仲井知歌
808
2019/12/19 12:54
仲井 知歌
柚。
黒崎 柚
……。
澪晴と話してから3日経った日。
突然、俺は知歌に話しかけられた。
いきなり何だ?目立ったことはしてないぞ…
理由を考えるが、特に思いつかない。
錬だってことがバレるはずもないのだから。
黒崎 柚
何?
仲井 知歌
私さ~今度の部活でやる最後の劇で主役になったんだよ。
黒崎 柚
へぇ。
自慢しに来たのかよ。
てか、それなら他の奴にやれ。
仲井 知歌
でねでね?誤解からいじめが始まったけど、手を差し伸べる人が出て友情が生まれて最後は誤解が解けて幸せになるってストーリーなの。つまりいじめられて、誰からも必要とされない女の子役を私がするわけ。
黒崎 柚
うん。
仲井 知歌
で、私いじめられたことないし?いじめられている柚にどんな感じか聞いて、参考にしようと思って。
あぁ、そういうこと。
遠回しな嫌味とかめんどいことするな…
でも…
黒崎 柚
ごめん、そのストーリーなら僕が教えることはないや。
仲井 知歌
何で?どう考えても、いじめられて、必要とされてないじゃん。
黒崎 柚
そこじゃない。
仲井 知歌
じゃあ、何?
黒崎 柚
僕、何もしてないし。理由もなくストレス発散の相手を押し付けられただけ。
昔を思い出し、段々と腹が立つ。
黒崎 柚
手を差し伸べ、誤解消えてハッピーエンド?そんなわけない。
バカみたいな話に笑いそうになるのを我慢する。
黒崎 柚
少なくとも、僕の場合はバッドエンド。僕の経験じゃハッピーエンドのシナリオにはならないから。
知歌が眉間にしわを寄せる。
何度でもやっとけ、俺は事実を言ったまでだ。
黒崎 柚
それにこう見えても友達、いるから。
話すのもしょうもなく感じてくる。
そう思った刹那、知歌は何が面白かったのか大きな声で笑った。
村上 夏帆
知歌、何笑ってんの?ちょっとうるさいんだけど。
仲井 知歌
だってぇ、柚が友達いるとか言うんだもん。
知歌の言葉に教室にいる何人かが笑う。
別に友達がいないと思われるのは構わない。
それよりも嫌なのは……
小林 修哉
そいつの友達とかカス決定じゃん!見る目なさすぎでマジ笑えるわ。
……これだ。あいつらを馬鹿にすること。
思わず、椅子を投げようと手に持つが、流石にそれは後がダルいと慌てて手を離すと近くにあった修哉の筆箱を本人にまぁまぁの力で投げ付けた。
小林 修哉
痛っ!!
まさか攻撃されると思わなかったらしく、筆箱は見事首へと命中。
周りは全く攻撃という方法で反抗されると思っていないから、驚いている。
小林 修哉
ふざけんな!!
黒崎 柚
……その言葉、そのまま返すよ。
そう言うと、俺は気分を悪くした原因から今すぐにでも離れたくなって、教室を後にしようとする。


すると、逃げようとしてるとでも思ったのか、俺の手首を修哉が掴んだ。
小林 修哉
俺に謝れ!!
黒崎 柚
……。
はぁ………ほんと、めんどくさい。
振り向いたふりをしてわざと修哉に掴まれた腕の向きを変え、俺に優勢な体勢に変えると俺は自然な形でそのまま修哉の足を取り、思いっきり床に叩きつけた。
いきなりのことに混乱する修哉。
まぁ、そうだろう。
よく分からないまま、コケたようなものだから。
人の腕を掴み、転んだ修哉を見て周りからは笑い声があがる。
遠山 愛梨
だっさ。
藤川 仁
そいつの腕掴んどいて、修哉が転ぶのかよ。
小林 修哉
え、何で俺転んで……
本人さえ今何が起きたのか分からないのかよ…
別に何でもいっか…それよりも……
黒崎 柚
……知歌、放課後でいい?
仲井 知歌
あ、うん…
黒崎 柚
じゃあ、放課後。
……何か気が変わった。
修哉の突然の出来事に驚いていた知歌が流されるままに俺に返事を返す。
そして、返事を聞くと俺はその場から立ち去り、一人になりたくて閉鎖され誰も近寄らない屋上への階段へと向かったのだった。

プリ小説オーディオドラマ