第8話

三時間目、秘密①
山内
山内
本当に具合悪いとかじゃないの?
水原桃華
水原桃華
え?
二時間目が終わり、すぐに席を立って保健室に向かおうとしたところ、山内くんにつかまった。
山内
山内
最近、これくらいの時間に教室飛び出すから、ちょっと気になってて
水原桃華
水原桃華
え、えーと……
まさか、勘付かれていたとは。
水原桃華
水原桃華
あの、えっと……
なんて返せばいいのか分からず、困ってしまう。
さすがに、バカ正直に答えることは出来ない。
ユカ
ユカ
あーっ、桃ちゃん、山内くんと何話してるのぉ? ユカもまーぜてぇ?
油断していた。
ユカが、背中にピタッとくっついてきた。
水原桃華
水原桃華
(しまった……!)
ユカ
ユカ
(何でまた山内くんのそばにいるわけ? 絶対仮病に決まってる。うざ)
水原桃華
水原桃華
──っ!!
ズキッと頭が痛くなって、ユカの心が流れ込んでくる。
ユカの本音は、いつものおっとりとした話し方とは違って、真っ直ぐに私を批判していた。
山内
山内
水原、本当に大丈夫?
突然頭を押さえて表情を歪めた私に驚いたのか、山内くんまで私に触れようとする。
ユカ
ユカ
(ほら、そうやって病弱アピールとかありえない)
ユカの更なる批判を頭の中で聞いて、私は手を差し出して山内くんを拒否して、無理矢理に笑顔を作った。
水原桃華
水原桃華
う、うん、大丈夫。私、ちょっと出てくるね


ズキズキと痛む頭を片手で押さえながら、私は保健室に向かう。
いつもの場所のカーテンを開けると、火ノ宮くんはすでに保健室のベッドに座っていた。
火ノ宮くんはベッドで休む日もあれば、ただ話し相手になってくれるだけの日もあって、様々。
文句も言うけれど、それでも毎日来てくれる。
火ノ宮直央
火ノ宮直央
今日遅かったな
顔を見ただけで、ホッと安心する。
水原桃華
水原桃華
火ノ宮くんは、早いね……
水原桃華
水原桃華
(不思議。顔を見たら、頭痛がおさまってきた)
顔を見て眉をひそめた火ノ宮くんは、ベッドの近くまで歩いてきた私が座るよりも早く、グイッと腕を引いて自分の方へと引き寄せた。
水原桃華
水原桃華
ひゃあ!?
引かれた反動で、火ノ宮くんの胸に飛び込む形になってしまう。
水原桃華
水原桃華
わ、ご、ごめ……
反射的に離れようとすると、正面から大きな手のひらが額を包むように触れた。
水原桃華
水原桃華
ひえっ!?
火ノ宮直央
火ノ宮直央
……少し熱いか
水原桃華
水原桃華
(それは多分、あなたがそんなことしてるからです……!)
火ノ宮直央
火ノ宮直央
顔色も悪いな
水原桃華
水原桃華
(ていうか、近い近い!)
保健の先生
もー、急いでるのに忘れ物しちゃうなんて
水原桃華
水原桃華
ガラッと勢いよく保健室の扉が開いて、中に入ってきたのは養護教諭の声。
瞬間、火ノ宮くんに肩を抱かれ、ベッドに倒れ込んだ。