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2020/07/16

第18話

オオカミ少女は嘘をつけない。②
火ノ宮くんと会う時は、いつも三時間目直前の休み時間。
水原桃華
水原桃華
(今行っても、いないだろうけど)
いてもたってもいられなくて、まっすぐに保健室へと急いだ。



保健室の前に立って、深呼吸。
ドアノブに手をかけた、その時。
保健の先生
火ノ宮くんさぁ、最近ずっと放課後にいるの、どうして? 見たところ、あんた元気いっぱいだよね
火ノ宮直央
火ノ宮直央
ここに、手が冷たい奴が来るかもしんねーから。俺があっためてやらないと
保健室の中から、聞き覚えのある声が聞こえた。
保健の先生
何それ、彼女?
先生がからかうように火ノ宮くんに問いかけている声を聞きながら、私は保健室の扉を開けた。
水原桃華
水原桃華
火ノ宮くん……!
保健室の中央にあるソファーに座っている火ノ宮くんは、驚いたようにこちらに目を向けた。
火ノ宮直央
火ノ宮直央
桃華
水原桃華
水原桃華
あの、私……
私が話を切り出そうとした時、廊下側からバタバタと走ってくる足音が聞こえて、誰かが飛び込んできた。
野球部員
先生ごめん、来て! 怪我した奴がいる!
保健の先生
やだ、大変。あ、そこのふたり、先生はちょっと外すから、誰かが来たらグラウンドにいるって伝えてね
保健の先生が救急箱を持って野球部員と出ていってしまい、一気にシーンと静まり返った保健室にはふたりきり。
水原桃華
水原桃華
あ、の、火ノ宮くん、私……
突然緊張してしまって、しどろもどろになりながら名前を呼ぶと、火ノ宮くんはソファーの自分の隣をポンポンと叩いた。
それに従って、彼の隣に座る。
水原桃華
水原桃華
(……あれ? 近い)
いつもベッドに座る時にはもっと近かったはずなのに、その距離に急に恥ずかしさを感じる。
そんな心情を知らない火ノ宮くんは、私の手を取った。
水原桃華
水原桃華
ひえっ!?
火ノ宮直央
火ノ宮直央
今日、そんな冷たくねーな
触れても、やっぱり彼の本音は少しも聞こえない。
自分の鼓動の速さを落ち着かせるように、胸に手を当てる。
水原桃華
水原桃華
あ、あのね、私、ちゃんと言いたいことが言えたの。今までは、自分がどう思われるのかって考えたら、怖くて出来なかったんだけど
火ノ宮くんは、ただ私の顔を見つめるだけ。
水原桃華
水原桃華
明日から何を言われるかって思うとちょっと怖いけど……。でも、今はすごくすっきりしてる。火ノ宮くんのおかげ
水原桃華
水原桃華
ありがとう
自分がどんな表情をしていたのかは、分からない。
火ノ宮くんが、目を見開いて私を見た。
火ノ宮直央
火ノ宮直央
笑った顔、可愛いな
水原桃華
水原桃華
え……
火ノ宮直央
火ノ宮直央
俺、桃華のこと好きかも
水原桃華
水原桃華
え!?
突然告げられ、頭で理解する前に、火ノ宮くんがこちらに少し距離を詰めてくる。
手を握られていて、逃れようもない。
水原桃華
水原桃華
へ、変な嘘つかないで!
火ノ宮直央
火ノ宮直央
嘘なんかついたことねーよ
水原桃華
水原桃華
そんなわけ……
そこで、ようやく気づいた。
彼の本音だけが聞こえなかったんじゃない。
そもそも本音でしか接していなかったからなんだということに。
今も、触れているのに何も聞こえない。
水原桃華
水原桃華
(つまり、それは……)
火ノ宮直央
火ノ宮直央
俺のこと、好きになる予定ないの?
水原桃華
水原桃華
な、ない!
真っ赤な顔で即答する私に、火ノ宮くんがムッとした表情を見せる。
火ノ宮直央
火ノ宮直央
なれよ
水原桃華
水原桃華
や、やだ
水原桃華
水原桃華
(火ノ宮くんが、テレパシー症候群じゃなくてよかった。この触れた手から、簡単にバレていたから)
水原桃華
水原桃華
(火ノ宮くんに嘘つきなんて言っておいて、本当の嘘つきは……)
不満げな顔で、それでも私の手を温め続ける彼を見ながら、そんなことを考えていた。