第4話

ふたりきり、カーテンの中で①
山内
山内
その水原のノートさ、俺にも見せてもらえないかな? 頼むよ、今日多分当たるんだ
ユカ
ユカ
んー……、ユカまだ写し終わってなかったんだけどなあ。でも、山内くんになら特別! はい!
ユカが照れ笑いでノートを差し出す。
水原桃華
水原桃華
(自分の手柄みたいに見せてるけど、それは私のです)
山内
山内
ありがとう、助かるよ
ユカにお礼を言った山内くんは、ホッとため息をつくようにノートを受け取る。
水原桃華
水原桃華
(でも、めずらしい。山内くんって、こういうところは真面目なんだと思ってたのに)
水原桃華
水原桃華
(結局、ノートが自分の元に返ってこないことに変わりはないけど)
山内くんに話しかけられたことがよっぽど嬉しかったのか、ユカは他の友達と一緒になって「きゃあっ」と喜んでいる。
それを横目に、自分の席に戻ろうとすると、
山内
山内
水原
水原桃華
水原桃華
え?
山内
山内
はい
水原桃華
水原桃華
あれ? 写したいんじゃあ……
コソコソと、先ほど受け取ったばかりのノートを私に返そうとする山内くんに、私は首をかしげる。
山内
山内
水原、困ってるのかなって思ったから。……余計なお世話だったかな?
水原桃華
水原桃華
えっ……、そんなことない! ありがとう!
山内
山内
よかった
山内くんの笑顔に、私は自分のノートをギュッと胸に抱きしめた。



そして、待ちに待った、授業三時間目直前の休み時間。
私はパタパタと靴音を鳴らして、廊下を急ぐ。
水原桃華
水原桃華
失礼します!
火ノ宮直央
火ノ宮直央
……うるせぇ
保健室に飛び込んで、人の姿が見当たらないのに声がしたのは、ベッドの上から。
水原桃華
水原桃華
火ノ宮くん、今日はいるんだね
火ノ宮直央
火ノ宮直央
今日は、って、お前は毎日来てんの? 暇かよ
水原桃華
水原桃華
私は、休み時間にしかいないもん。火ノ宮くんは、三時間目丸ごとサボってるんでしょ? ダメだよ、授業はちゃんと出ないと
火ノ宮直央
火ノ宮直央
はー、うるせ。お前がいると、ずっと喋ってるから寝てらんねー
水原桃華
水原桃華
休み時間の間くらい、付き合ってくれたっていいじゃない
面倒くさそうに頭を搔く火ノ宮くんに近づき、ベッドに座る。
寝転んでいた火ノ宮くんは、ため息をつきながら上半身を起こした。
すごく、迷惑そうな表情。
だけど……。
私は、掛け布団の上にある、彼の手に触れる。
火ノ宮直央
火ノ宮直央
? 何?
水原桃華
水原桃華
(ほら、聞こえない……)
水原桃華
水原桃華
何でもない
彼の頭の中はきっと、私への苦情でいっぱいになっているはず。
なのに、何も聞こえない。
水原桃華
水原桃華
(嬉しい……)
水原桃華
水原桃華
(自分から人に触れるなんて、いつぶりだろう。気にしないと言ってくれている家族にすら、自ら触れることの出来ない私が)
火ノ宮直央
火ノ宮直央
お前の手、すっげー冷たいよな。こないだも思ったけど
水原桃華
水原桃華
えっ? あ、ご、ごめん
考えごとをしていて、忘れていた。彼の手に触れたままでいたことを。
私は、慌てて手を離す。
水原桃華
水原桃華
火ノ宮くんの手は、いつも温かいよね
火ノ宮直央
火ノ宮直央
布団の中だったからな。あ、だから、いつも意味なく人の手さわってくんのか、お前
水原桃華
水原桃華
え? うーん、……うん、そうかな
水原桃華
水原桃華
(それでいいや。本当の理由なんて、言えないんだし)
水原桃華
水原桃華
(あなたに触れると安心するんです。……なんて)
火ノ宮くんは、私を見てため息をつき、ギュッと手を握ってきた。