第13話

心を知りたい
水原桃華
水原桃華
あの、本当にごめんね。火ノ宮くんは、私を心配してくれただけだったのに
火ノ宮直央
火ノ宮直央
だから、お前が言ったんじゃないだろ、って。てか、あれくらい慣れてるし
水原桃華
水原桃華
慣れてるって……
水原桃華
水原桃華
(よく知りもしない人から、陰口を言われるのが? そんなことに慣れてるの? そんなのって……)
私たちは学校を出てから、並んで道路の歩道を歩いていく。
水原桃華
水原桃華
そんなこと、慣れちゃダメだよ。火ノ宮くん、暴力沙汰で停学になったとかまで言われてるんだよ。あんなの、絶対嘘だもん
私が唇をとがらせて言った言葉に、火ノ宮くんは驚いた表情を見せる。
火ノ宮直央
火ノ宮直央
なんで嘘なんだよ。本当かもしんねーじゃん
水原桃華
水原桃華
だって火ノ宮くん、初対面の時からずっと優しいから。理由もなく暴力とか、そんな人には見えない
火ノ宮くんはさらに目を大きく見開いて、深く息を吐き、頭を搔いた。
火ノ宮直央
火ノ宮直央
うちの学校の奴が、他校の奴にカツアゲされてるの見て、殴った。一対五だったけど、なんか俺が勝った。それだけだ
水原桃華
水原桃華
え、強っ……。ほら、やっぱり。元々は、火ノ宮くん悪くないじゃない
火ノ宮直央
火ノ宮直央
いいんだよ。言わせたい奴には、言わせときゃ
水原桃華
水原桃華
(それって、すごく辛くないのかな。勝手にイメージを作られて、よく知りもしないくせに好き勝手に言われて……)
水原桃華
水原桃華
(もっと周りに合わせるとかすればいいのに。そうした方が、上手く回るのに。案外不器用なのかな)
チラッと横にいる火ノ宮くんを見てみると、堂々と前を見据えている。
水原桃華
水原桃華
(とか思ってみても、……ちょっとうらやましい)
水原桃華
水原桃華
(私は、他人に本当はなんて思われているのか、そればっかり気にして生きているから。人にいい面ばかりを見せようって、ずっと考えているから)
水原桃華
水原桃華
(だから、誰の目も気にせず、“自分”で生きている火ノ宮くんはすごい)
水原桃華
水原桃華
その、カツアゲされてたっていう人はどうなったの?
火ノ宮直央
火ノ宮直央
あー、どうだろ。俺が五人をボコボコにし終わる前には、すでに消えてたな
水原桃華
水原桃華
助けてもらって、お礼も言わなかったんだ。ひどいね
火ノ宮直央
火ノ宮直央
まあ、逃げる元気はあったってことじゃねーの? 多分、無事だろ
水原桃華
水原桃華
(カツアゲされた生徒の安否を気づかって言ったわけじゃないんだけど。火ノ宮くんにとっては、そっちの方が重要だってことなのかな)
水原桃華
水原桃華
(こんな人、初めて)
水原桃華
水原桃華
(火ノ宮くんは、不思議な人……)
ボーッとしていたら、火ノ宮くんが先にどんどん進んでいく。
少しずつ小さくなっていく背中が、ピタッと立ち止まって、振り向いた。
火ノ宮直央
火ノ宮直央
何してんだ、置いてくぞ
水原桃華
水原桃華
あっ、ごめんね
駆け足で前に進む。
隣に並んで顔を見上げると、視線が重なる。
火ノ宮直央
火ノ宮直央
桃華
水原桃華
水原桃華
!!
微笑んだ彼は、私の頭を撫でる。
水原桃華
水原桃華
(火ノ宮くんは、やっぱり不思議)
触れて、その心が見えたらよかったのに。
そんなことを、初めて思った。