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第2話

保健室の君
山内
山内
水原、おはよう!
水原桃華
水原桃華
!?
うつむいて手を胸に当てて歩いていると、前方からかけられた男子の声に、ドキッと胸が跳ねる。
そこにいたのは、クラスメイトの山内くん。
いつも明るくて、誰にでも分け隔てなく優しくて、女子にも人気がある。
水原桃華
水原桃華
あ、山内くん……、おはよ
ドキドキがおさまらない胸に手を当てて、あいさつを返す。
山内
山内
どうかした? 元気無さそうだけど
水原桃華
水原桃華
平気だよ
山内
山内
本当? 顔色悪い感じするから
水原桃華
水原桃華
!!
額に山内くんの手が伸びてきて、思わず身を引く。
水原桃華
水原桃華
ほ、本当に大丈夫だよ。ありがとう!
山内くんを拒否したのをバレるのが怖くて、私は早口でまくし立てて廊下を急いだ。



私が発症したのは、今から三年前。中学二年生の時だった。
それは、何の前触れもなく始まった。
放課後の教室で、友達のミカ、ゆうちゃんと雑談をしていた時のこと。
当たり前のように恋バナに発展して、隣にいたゆうちゃんに触れた時、笑い声に混じって、それと同時に声が聞こえた。
ゆうちゃん
(あーあ、つまんない話何回するの? 大体、ミカなんかが進藤くんと付き合えるわけないじゃん。彼の彼女は私なのに。さっさと帰って、進藤くんと電話したいなぁ)
水原桃華
水原桃華
えっ!? ゆうちゃんって、進藤くんと付き合ってたの!?
……気づかなかった。これが、心の声だなんて。
友達の好きな人と付き合っていたこと。そしてそれを誰にも秘密にしていたこともあり、彼女が輪から外されるのは、一瞬の出来事だった。



今でも、思い出すと胸がギュッと苦しくなる。

それから私は、知り合いが誰もいない遠方の高校に進学した。
もう、絶対に繰り返さないと誓って。
水原桃華
水原桃華
(薬で症状を緩和出来るU16もあるって聞くけど、私のテレパシー症候群は発症者が少ないこともあって、まだ開発には至らないって病院で説明を受けたし……)
水原桃華
水原桃華
(人の本音なんて、聞きたくない。知りたくないのに)
自分が歩いてきたばかりの道を振り返って、またすぐに向き直る。
水原桃華
水原桃華
(教室、しばらく戻りたくないな。私のノートだって、都合よくたらい回しにあっている最中だろうし)
水原桃華
水原桃華
……
そのまま歩を進め、自分の教室から遠ざかることを決めた。



そして今、私が見上げているのは『保健室』の標識プレート。
水原桃華
水原桃華
(授業をサボるなんて初めてだけど、たまにはいいよね。熱はないけど、具合が悪いって申告した人間を無理やり追い出すなんてことはしないだろうし)
嘘をつくことに少しの罪悪感を抱えながら、保健室の扉を開ける。
水原桃華
水原桃華
失礼します……、あれ?
シーンと静まり返った保健室に、人の姿は見えない。養護教諭の先生の姿さえも。
水原桃華
水原桃華
(いないのかな……。勝手にベッド借りちゃってもいいかな。先生が来たら、後で謝ればいいか)
扉に一番近いベッドに乗って、掛け布団をめくる。
──むにゅっ。
水原桃華
水原桃華
──っ!?
手に何か柔らかい感触と共に、声にならない悲鳴が出た。
火ノ宮直央
火ノ宮直央
いってぇ……、なんだ、お前
水原桃華
水原桃華
(人!? この人は、確か……)
ギロッと鋭い目で睨み、迷惑そうに眉をひそめているベッドの先客は、隣のクラスの火ノ宮直央ひのみやなおくん。
彼をひと言で言えば、金髪で強面の一匹狼。
周囲に誰も寄せ付けず、最近まで暴力沙汰で停学していたとの噂がある。
水原桃華
水原桃華
わ、私はちょっとベッドを借りようと……
水原桃華
水原桃華
(ベッドの周りを囲むカーテンが開いていたから、誰もいないと思ったのに。……ううん、そんなことよりも……)
水原桃華
水原桃華
(今、触ったのに、何も聞こえなかった?)