第43話

9-2
72
2021/10/20 18:32










7月後半、夏休みが始まりだしたときだった

私は轟くんの決勝試合を見届けたあと、そのまま実家へ向かった










試合参加を止められるほどの重症だと不安に襲わていたが、かっちゃんのお母さんによれば治ればまた部活にも参加できる程度の怪我だったらしい

そして大会が終わる最終日にかっちゃんは帰ってくるのだと











かっちゃんが帰省したと聞きつけ私は大慌てで隣の家に向かった。いつも通りかっちゃんのお母さんが出迎える










「かっちゃん、大丈夫ですか」

「全然大丈夫!一人で歩けるし」





「お邪魔してもいいですか…?」

「どうぞどうぞ〜、多分部屋で筋トレでもやってんじゃないかな」

「お邪魔します…」



















閉められたドアからはかっちゃんの息切れの声が聞こえる。いつもより辛そうに感じるのは気のせいか


入り口の前で名前を呼ぶと少し経ってからドアが開いた










「…」

足には包帯が巻かれていた。当たり前だけど見慣れない光景に戸惑う

かっちゃんは表情もしぐさも普段と変わらない。それでも大丈夫と聞かずにはいられなかった








爆豪 勝己
なんともねぇ
「…本当に?怪我だけじゃなく、大会のことも?」
爆豪 勝己
「…止められたもんは仕方ねぇだろ」




















かっちゃんは仕方ないなんて思う人じゃないよ

どうしてこんな時まで頼らないの

ただ一言、悔しいって言うだけなのに


 








再び体を痛めつけようとするから咄嗟に床についていた彼の手を握った

「今はトレーニングしないで…」





これが精一杯でそれ以上は泣いてしまいそうで言えなかった

いつもその姿を追いかけてたから、言えなかった


















爆豪 勝己
半分野郎が優勝した
かっちゃんはトレーニングはせず、そのままの体勢で話し始めた





「うん、決勝戦観た」
爆豪 勝己
俺だって走ってたら優勝してた
誰にも負けるはずがねぇ









爆豪 勝己
けど、結果はあいつがインターハイ優勝、俺は準決勝敗退









爆豪 勝己
怪我した自分にくそほど腹が立つ
「かっちゃんは悪くないよ…」

握った手の中が動いた

かっちゃんの顔は少しずつ赤みを帯びていく





これ以上自分を追い込んでほしくなくて私は言った

ほぼそれは癖に近いものだったから溢れるように口から出た

















「準決勝、すごかったよ」

かっちゃんの目に自分の顔が映った










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