第15話

4. 夏の終わりに
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2021/09/04 11:05
 









大会後、突然母はかっちゃんの優勝お祝いを開こうと言い出した

かっちゃんのお母さんは最初そんなことする必要ないと言っていたけれど、母の"酒が飲みたい"という魂胆に気がつくとかっちゃんの意見も聞かず、すぐに計画を立ててくれた

結局、人様に準備をさせるのは申し訳ないと言って爆豪家でパーティーが催されることになった










お祝い当日の夕方、デパートで買ってきた惣菜を持って母と隣の家に向かう





「お邪魔します」

「いらっしゃい、入って入ってー」










中学に上がってかっちゃんと一緒にいる時間は減ったが今でも月に2回程度食事をする

かっちゃんは一緒に食事をするものの、食べるときだけリビングに降りて、速攻でご飯を食べ終えると自室に戻ってしまう

その後食べ終えた私も母親二人を残して家に帰る

そして2時間後くらいに陽気になった母が帰ってくるという流れが大体で。

今日もいつも通り挨拶をして手を洗いに洗面所へと向かう 出迎えるかっちゃんの姿などない

ましてやかっちゃんと会うのはあの日以来



悶々と考え事をしながら歩いていると後ろから強く腕を引っ張られる

「わっ」

親2人はいつものようにお喋りしながらリビングへ歩いている

























「かっちゃん、どうしたの」

「うるせぇ」










そのまま階段を登らされ、かっちゃんの部屋に連れ込まれる





バタン。

扉を閉めるとかっちゃんは振り向いて私を見つめてくる

腕は掴まれたままで

表情を見るからに...





「かっちゃん、怒ってる...?」





...





返事はこない






「かっちゃん、大丈夫...?」

自由がきく方の腕をかっちゃんの頭へ伸ばそうとしたが、その腕をも掴まれてしまう

























「...お前、寂しくねぇのか?」





「.........寂しくないよ、最近は友達ができたし...、





それに、かっちゃんもいる...」










かっちゃんの両腕を握る力が強くなる

























「大会前から心配かけてごめんね、もう大丈夫。寂しくない...」

そういった瞬間、両腕が解放されたと同時にかっちゃんの顔が一気に近づいてきた

かっちゃんの手が私の両頬を覆い、お互いの鼻がぶつかる。




















一体何が...



怖くなって目をぎゅっとつぶった途端、下からかっちゃんのお母さんの呼ぶ声が聞こえてきた。





...





かっちゃんの鼻息が顔にかかる距離で、沈黙が続く

























ゆっくりと目を開け視線を合わせると、かっちゃんは何も言わずに部屋を出ていってしまった








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