「寮の荷物も忘れ物ない?」
「うん、大丈夫!もうかっちゃん来るから行くね!!」
「ちゃんと帰って来れそうな時は連絡しなさいよ」
「わかった!それじゃあ、いってきます!」
今日から雄英に入学、そして初めての寮生活がスタートする
「A組... かっちゃんと出久くんも一緒だ!良かったぁ...」
「...ッチ」
私が2人を出会わせなければこんな関係になっていなかったのだろうか...そう思うと肩身の狭い思いになる
この一年で2人の関係も修復したい...
階段を登り程なくして教室にたどり着く。
緊張する...。出久くんはもういるかな
いや、いなくたって関係ない
今日は自分からクラスの人に声をかけるんだ...!
いつまでも扉の前で悶々としていると痺れを切らしたかっちゃんが扉を開けた
教室にいる生徒が一斉にこちらに視線を向ける
「出久くんはまだ来ていないみたいだね」
沈黙の中、向けられた私達への視線に居心地の悪さを感じ、思い切って声を出してみた
しかし、かっちゃんは興味ないといった様子で自分の席に向かってしまった
1人入り口に取り残され、歩くことすら緊張してしまう。
ゆっくりとした足取りで私も座席確認へ向かう
(び、美少女だ!!)
(最高だぜ雄英...!!)
(何あれ小動物みたいー!)
(え、あの子めっちゃ可愛いじゃん...話しかけるしかなくね?!)
(アイドルみたいな顔してんなー)
“ ...でも、
隣にいるやつめっちゃ怖い!!”
廊下側前から4番目の席に座る。かっちゃんとは対角線上に離れた。また、ここから向こうの様子は人の体でよく見えない。
この時になって私はようやく自分の置かれた状況について理解した。
この学校には知り合いはほとんどいないのだと。幼稚園、小学校から一緒だった顔見知りの人たちに囲まれた教室とは違う新しい環境。
知らない人から向けられる視線、周りの声。到底声などかけられそうにもなかった。
これがまさしく一人ぼっちなんだと。
私は限界を感じ、とうとう下を向いた
「じろじろ見てんじゃねぇ」
その時、彼の一言で再びクラスが静まり返る。
多分今はこの教室にいる誰もが居心地の悪さを感じていると思う...。
少しの雑音も許されない空気感
私が卒業式で感じた大人の雰囲気はどこへ...
「君!その態度はなんだ!!」
「あぁ?てめぇどこ中...」
「俺は...」
私の後ろに座っていた彼が良くも悪くも空気を読めなかったおかげで沈黙からは脱出できた
しかし決していい雰囲気とは言えない...。
クラス中が2人のやりとりを伺っていると突然教室の扉が開く
私はこの状況を変えてくれるであろう救世主に安堵の表情を向けた
「出久くん...!」
「お、おはよう...!綾瀬さんっ」
「...」
もうすぐで入学式始まりのチャイムが鳴る
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。