「インターハイに行ったこと自体すごいことだし、かっちゃんの場合は勉強だって家事だって、なんだってすごい
私は体育祭ですらどうしたら足を引っ張らないかって考えてたのに
結局それもかっちゃんに助けてもらったようなもんだし…敵わないよ」
握っていた手を握り返される
床に座り込んでいた2人
かっちゃんが私を見つめる
目を逸らせない
手も抜け出せるはずなのに…、できない
「かっちゃんは出会った時から今もずっと私にとってすごい人だよ
でもそれがかっちゃんの負担になってたんだよね
わかってて気づいてないふりしてた
離れたくなくて…
ごめんね」
ようやく言えた。これで完全にかっちゃんを自由にさせてあげられる
かっちゃんの顔がゆっくり私の肩に落ちてきた
硬い短髪が私の左耳をくすぐる
握られた手とは別の彼の手が背中へ回ってきて体が温かい
私はその温もりに包まれながらかっちゃんの言葉の意味を考えた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!