......
かっちゃんは黙って私に賞状を渡してきた
優勝の文字が目に入る。毎回、この文字...
...本当にこの人は、
遠い存在なんだな、
「大会、新記録!?すごいね!!かっちゃん!」
「県大会だし。大したことねぇ。」
「全国優勝3連覇、応援してるね!!」
「今年も大会、見にこいよ」
かっちゃんは私から賞状を受け取ると、「じゃあな」と言って帰っていった
かっちゃんは何か成績を残すたびに私に見せる
小学生のころは漢字テスト、書初め大会など些細なものが多かった
基本的になんでも上手にできるタイプだけど、中学で始めた陸上は段違いで凄く
入部した年の新人戦で全国優勝。一瞬にして町の有名人となった
次の年に全国大会を2連覇したときにはもう......
私がかっちゃんの後ろをついていけなくなった
遠く、離れてしまった......
私は、もう追いつけない
けれど、かっちゃんは
私も連れて行こうとする。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!