第42話

9. 強くなる理由
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2021/10/13 17:42








夏に近づいていくにつれて陸上部の公欠が増え始めた

かっちゃんは寮生活になった今でも結果報告をしに来る

「すごい、やっぱり速いね…!」
爆豪 勝己
大事なのはインターハイだろ
「そ、そっか…」

当たり前みたいにいうんだね





1人で勝手に悔しくなって黙った

いつもはすぐに帰っていくのに今日は寮の廊下で沈黙が続く

かっちゃんも私の方をじっと見て動かない






悔しくて黙ったはずなのに気づけば私がかっちゃんに話しかけていた





「どうしたの…?」

時々視線を動かすものの、何も返ってこない





やがて答えを言わないまま去っていった





「大会、見にいくね」

彼の足が一瞬止まる

それでもこちらに振り向くことはなかった




















こんなことは初めてだ。いつもまるで答えを知っているかのように話すかっちゃんがためらうなんて

悩んだり、苦しんだりしているかっちゃんは見たくない。かっちゃんが昔みたいに嬉しそうに自慢する姿が見たい。純粋に走ることだけを楽しんでほしい。





いつの間にか勉強の手は止まっていたのに頭が疲れた感じがする





とにかく、私が願うことはそれだけだった





















それから一ヶ月後、インターハイが行われた

陸上の場合種目が多いので、5日間開催される。A組からはかっちゃんと轟くんが出場した。

一時予選を難なく突破したかっちゃんは次の準決勝も通過し決勝まで登りつめた

しかしその時同時に足を痛め、決勝は周りの大人たちの判断により辞退させられた





かっちゃんは必死に暴れて抵抗したらしいがすぐに病院に連れて行かれ、準決勝以降にかっちゃんの姿を会場で見ることはなかった








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