お互い黙ったまま見つめ合っていると、かっちゃんのお母さんが口を開ける
「人のこと睨まないの、あなたちゃんが怖がってるでしょ!」
「ごめんねぇ、あなたちゃん。こういう性格なの。」
少しの間訪れた沈黙を誤魔化すかのように子供たちに話しかけると、母に目線を移した
母は軽く笑った後、そのうち慣れるよと伝え、
そのまま母親二人はにこやかな表情でリビングの方へ歩き出した
私は離れていく母を追いかけようとしたが、彼からの視線に気がつき、その場に立ち止まる
ほんの数秒、目と目があって
その時何か言わなきゃいけないと感じたけれど、声は出せなかった
恥ずかしくなって彼から目線をそらしたとき、リビングから「美味しそう」という母の声が聞こえてきて、
そこでようやく彼は視線を逸らし、向きを変え、何も言わずにリビングへ歩き出していった
彼を追いかけてリビングに入ると、入り口すぐに料理が数品並べられたダイニングテーブルがあった
いつもの夜ご飯とは違った豪華な景色に胸を躍らせていると、ご飯ができるまでもう少し待ってねと言う声がキッチンから聞こえてくる
私がワクワクした表情をキッチンに顔を向けると、かっちゃんのお母さんは急いで料理を作っていた
うん、わかった そんな感じのことを言おうとしてかっちゃんのお母さんを見つめる
...緊張して声が出ない
モタモタしているうちにかっちゃんのお母さんは母との会話を再開していた
ダイニングテーブルの椅子に座る母にも目をやるが、会話に集中していて全くこちらを見ない
その時、明るい気持ちが一変して寂しく、悔しくなった
母の隣に行くのをためらっていると、また視線を感じて
リビングの奥を見ると
また不機嫌そうな彼と目が合った
けれど私は怖がることも、何かに焦る感じもなく、
むしろ安心していた
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!