咲玖にスマホを投げられ、それを追いかけ
壁を越えた僕。送信ボタンを押すと、スマホ
は投げ返し僕の体は落下していった。
そう呟く。
珠莉が死んだ昨日、僕は瑚子にこう言った。
「僕は瑚子と友哉を生き残らす。」って。
これで結果オーライ、僕は自殺になるけど、
ルールにはOKと書かれていた。
やがて、貯水庫の水面にぶつかる。
水面は鉄のように硬く、全身がとんでもなく
痛めつけられた。
遠のいていく意識。すると、花火の光が当た
り、水面が赤く光った。
途端に脳内に流れ込む忘れていた記憶。
そうだ…僕は父さんが嫌いだったんだ……
水槽に入れられた僕。水槽の中にどんどん水
が入っていき、僕は枷を足につけられ、外に
出ることが出来ない。水の中で息を止めてる
と蓋が開けられ、コードのようなものを水槽
に入れて蓋を閉められた。
水槽のガラス越しに見える笑う父さんの顔。
その顔は歪んでいた。
父さんは手元にあった赤いボタンを押す寸前
にこう言った。
え…?実験…?
そんな思考を掻き消すように、水槽内に電流
が流れ始めたのだ。
痛くて痛くて、水を通して身体中に電流が
流れている気がした。
必死に水槽を叩いても電流を止めない。
何で…!何で僕がこんなことに…!!
その瞬間、僕の中の悲しみは怒りに変わる。
息が続かなくなり、空気を泡を吐いた時に
電流は止められた。赤く染まる景色を見て、
僕は意識を手放した…
意識を取り戻した時、僕は父さんに抱きしめ
られていた。
その声は優しくさっきとは大違い。
僕の目を見て、そう言った父さん。
入っていた水槽が目に映る。
あ、れ……?
黒髪黒目で生まれてきた僕。なのに、水槽に
映る目は…赤い。
必死に訴え、諦めた父さんは能力を封印する
元の目の色と同じカラーコンタクトを作って
くれた。
その謎の実験以降、僕と父さんの会話は消え
父さんに話しかけられても無視していた。
初めて人に対して死んで欲しいと思った。
僕の中で父さんはゴミ以下だ。
何回も自分の目が嫌いで、何回も自分の目を
えぐり取ろうと思ったけど勇気が無くて。
段々お風呂や寝る時にもカラーコンタクトを
付け続けるようになって…
全部思い出した……
あの後、自殺しようと道に飛び込んだ時に
実験体が死ぬのは困るゴミが代わりに轢かれ
母さんと兄さんも巻き込んだんだ…
死んだ時に母さんと兄さんの死のショックで
僕は記憶喪失。何年もカラーコンタクトを
つけたまま生活ってことねぇ…
全てを思い出した自分を嘲笑いながら、僕は
水中で目を閉じたのだった…
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。