第14話

笑って欲しい
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2026/05/29 13:52 更新



あの日の放課後から、美咲は学校に来なくなった。

最初の数日は、クラスも少しざわついていた。


クラスメイト
また停学?


クラスメイト
てか、最近やばくなかった?


クラスメイト
先生達なんか隠してない?



そんな声が、教室のあちこちから聞こえてくる。

人って慣れるのが早い。

一週間もすると、美咲のいない空気が“普通”になっていた。

空っぽの席だけが、変に目につく。

私はそれを見ないふりをしながら、窓の外を見ていた。

グラウンドでは運動部が走っている。

いつも通りの景色。

仁人は何も聞かなかった。

ただ、空席を見る時だけ少し静かな顔をしていた。

勇斗も、変に話題には出さない。

でも時々、「美咲ちゃん元気かな」と小さく呟いていた。

二週間後。

ホームルームの終わり。

担任が静かに口を開く。


担任
佐々木美咲は、転校することになった。



教室がざわつく。


クラスメイト
え、急に?


クラスメイト
どこ行くの?



でも担任や先生達は詳しく話さなかった。

“向こうでも頑張ってほしい”

それだけだった。

私は何も言えなかった。

転校。

その言葉が、思ったより重かった。

放課後。

今日は珍しく、一人で帰っていた。

仁人は仕事。

勇斗は部活の助っ人。

いろはと咲希は部活。

夕方の風が制服を揺らす。

空は薄いオレンジ色で、街全体が少しだけ静かに見えた。

私はぼんやり歩きながら、あの日のことを思い出していた。

男の腕を掴んでいた仁人。

静かな声。

怪我してまで助けてくれた手。

……好き。

いやほんとに。

なんであんな顔良い上に優しいんだろ。

しかも本人無自覚なのが一番タチ悪い。

仁人は天使だから。

きっと誰にでも優しいだけ。

そう思わないと、期待しそうになるから。





??
……あなた



声がして、足を止める。

振り返る。

そこに、美咲が立っていた。


あなた
……美咲



制服姿。

でも前より少し痩せた気がした。

髪も少し乱れていて、目の下には薄く隈がある。

それでも。

前みたいな鋭さは、少しだけ消えていた。

美咲は私を見ると、少しだけ視線を逸らした。


佐々木 美咲
……転校する


あなた
うん。聞いた



沈黙が落ちる。

気まずい。

でも、逃げたい感じじゃなかった。

ただ、お互い何を言えばいいのか分からないだけ。

風が吹く。

長い髪が揺れる。


佐々木 美咲
……児童養護施設、行くことになった


あなた
……そっか



勇斗の言ってた場所だ。

胸の奥が少しだけ軽くなる。


あなた
……良かった



その瞬間。

美咲の目が少し揺れた。


佐々木 美咲
……なんで


あなた


佐々木 美咲
なんで、そんな顔できるの



美咲は俯いたまま、小さく笑う。

でもその笑い方は、自嘲みたいだった。


佐々木 美咲
アタシ、あんたのこと嫌いだった



夕陽が、美咲の横顔を赤く染める。


佐々木 美咲
ムカついてた


佐々木 美咲
親に’’愛されてて’’


佐々木 美咲
友達がいて


佐々木 美咲
楽しそうに笑ってて……っ



声が少しずつ震えていく。


佐々木 美咲
……なのに、あんた全然壊れなくて



私は何も言えなかった。


佐々木 美咲
だから余計イライラした


佐々木 美咲
見てると壊したくなった









佐々木 美咲
……ほんと、性格悪いよね 笑






佐々木 美咲
……っずっと謝りたかった


佐々木 美咲
いじめたのは環境のせいじゃない、ただアタシが未熟だった


佐々木 美咲
謝っても貴方には一生分の傷があると思う


佐々木 美咲
一生分かけて償っていく……ので



少しの沈黙。

それから、美咲はぽつりと呟いた。


佐々木 美咲
……あと、吉田仁人


あなた
……え



美咲は少しだけ眉を寄せる。


佐々木 美咲
アタシ、吉田仁人のこと好きだから



心臓が跳ねる。


佐々木 美咲
転校してきた時から、ずっと



夕陽が眩しくて、上手く表情が見えない。


佐々木 美咲
顔がかっこよくて、優しくて


佐々木 美咲
誰にでも平等で


佐々木 美咲
……だから好きだった



胸の奥がざわつく。

でも。

次の言葉で、そのざわつきが変わった。


佐々木 美咲
なのに、あんたにだけ対応が違った


あなた
……



違う


佐々木 美咲
あの人、自分じゃ気づいてないだろうけどね



あの人は天使だから。

守らないといけない対象だから。


佐々木 美咲
あんたには特別扱いしてたよ



息が止まりそうになる。


佐々木 美咲
……アタシのほうが、先に……



佐々木 美咲
好きだったのに……



その声は、怒ってるというより。

寂しそうだった。


佐々木 美咲
あんたにはちゃんと笑う



胸が熱くなる。

そんなこと、考えたことなかった。

でも。

いや、違う。

違う違う。

仁人は天使だから。

誰にでも優しいし。

特別とかじゃなくて。

……多分。


あなた
……気のせいじゃない?


佐々木 美咲
……は?


あなた
じ……吉田くんってそういう人だし


佐々木 美咲
そういう人だから分かるんじゃない



即答だった。


佐々木 美咲
あの人、あんたのこと見る時だけちょっと柔らかい


あなた
えぇ……



顔が熱い。

心臓もうるさい。

意味分かんない。

でも。

その瞬間、初めて頭に浮かんだ。

──告白。

もし。

もし本当に、少しでも特別なら。

言ったら、どうなるんだろう。


佐々木 美咲
……でも、告白してもきっと無理だと思う


あなた



心読まれた????


佐々木 美咲
あの人、誰のものにもならなそうだし



その言葉に少し笑ってしまう。

……分かる。

めちゃくちゃ分かる。

人間っぽくないんだよな、あの天使。

まぁ、天使だし。


佐々木 美咲
でも



美咲が私を見る。


佐々木 美咲
言わないまま終わるよりは、マシかもね



その言葉だけが、胸に残った。

少しの沈黙。

それから。


あなた
……施設行っても、スマホある?


佐々木 美咲
話し逸らした


あなた
うるさい



美咲が少し笑う。

前みたいな、人を馬鹿にする笑い方じゃなくて。

年相応の、普通の女の子みたいな笑顔だった。


あなた
また会おうよ



美咲の目が少し揺れる。


あなた
次は普通に遊ぶだけでいいから



少しの沈黙。

それから。


佐々木 美咲
うん……!



小さく頷いたその顔は、前までの鋭さなんてどこにもなくて、ただの年相応の女の子だった。

その瞬間、今まで自分が見ていたものが全部ずれていた気がした。

冷たいとか、強いとか、そういう言葉で勝手に形を作っていただけで、本当はそんな大層なものじゃない。

ただ、壊れてしまわないように必死に笑ってるだけの子ども。

大人の都合に合わせて、空気を読んで、何もなかったみたいに振る舞うしかなかっただけ。

それに気づいた途端、胸の奥がじわっと熱くなる。

どうしてこんな小さな子が、こんなことを覚えなきゃいけないんだよって、理不尽さだけが残る。

普通に笑っていいはずの年齢を、無理やり“気を遣える子”に変えてしまう大人がいる。

その現実が、やけに静かに腹に落ちて、息が詰まる。


あなた
……頑張ったね





14話ありがとうございます!

美咲ちゃんは親の元を離れる決意をしました!

すごく悩んだでしょうね……!

♡と☆とコメント待ってます!

今日は咲希ちゃん↓↓↓





1番目がでかいです!

癖っ毛のボブ。

真面目な女の子。

1番モテます。

男ウケ抜群のタレ目、守りたくなるような顔。

最近は彼氏ができたとの事!!

いろはに裏切り者!!と追いLINEが来ました。

自由ないらはと、しっかり者な咲希の相性は抜群です!!

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