第17話

天使みたいに笑う君へ
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2026/05/29 23:46 更新
山中柔太郎side


楽屋。

撮影の空き時間。

ソファに寝転がりながら、俺は向かいにいる勇ちゃんをじっと見た。

最近、なんか違う。


佐野 勇斗
どうした?


山中柔太郎
……最近なんかキラキラしてない?


佐野 勇斗
は?


山中柔太郎
恋してる人の顔してる


佐野 勇斗
キモ


山中柔太郎
否定しないじゃん


佐野 勇斗
めんどくさ……



勇ちゃんがペットボトルを開けながら目を逸らす。

分かりやすすぎる。

M!LKとして活動してると、こういう時間は多い。

撮影の待ち時間とか。

移動中とか。

本番前の変なテンションとか。

その中で、俺は結構分かっていた。

勇ちゃんって、見た目よりずっと不器用だ。

周りからは、

“チャラそう”

“軽そう”

“顔だけで売れてそう”

そんなイメージを持たれやすい。

でも実際は真逆だ。

誰よりも台本読むし。

できないことがあると、見えないところで悩むし。

周りをめちゃくちゃ見てる。

でも、それを口にしない。

一人で飲み込む。

だからこそ。

“ちゃんと中身を見てくれる人”に弱いんだろうなって、思っていた。


山中柔太郎
で、誰なの?


佐野 勇斗
いや別に


山中柔太郎
絶対居るって


佐野 勇斗
居ないって!


山中柔太郎
その“いない”の時いるんだよな〜 笑


佐野 勇斗
分析やめろ 笑



でも。

否定の仕方が弱い。

俺はニヤニヤしながら続ける。


山中柔太郎
どんな子なの?


佐野 勇斗
……最近尊敬してる子はいる、けど


山中柔太郎
うわ、急に真面目じゃん


佐野 勇斗
いや、ほんとに!



勇ちゃんは少し考えるように視線を落とした。


佐野 勇斗
ちゃんと人見てるっていうか……


山中柔太郎
へぇ


佐野 勇斗
なんか、一緒にいると誤魔化せないんだな〜



その瞬間。

なんとなく察した。

あ、これ結構本気だ。


佐野 勇斗
あと……眩しい


山中柔太郎
え?


佐野 勇斗
いや、なんか



勇ちゃんは少し笑った。


佐野 勇斗
教室の真ん中にいるタイプなんだけど


佐野 勇斗
全然嫌な感じしなくてさ〜


佐野 勇斗
自然に人が集まって


佐野 勇斗
ちゃんと周りみてるから


佐野 勇斗
……見てると、俺まで頑張ろー!って思えるんだよ



俺は少し黙った。

それ、かなり好きじゃん。


山中柔太郎
勇ちゃんさ


佐野 勇斗
ん?


山中柔太郎
そういう子、好きそう


佐野 勇斗
どゆこと?


山中柔太郎
ちゃんと中身見てくれる人



勇ちゃんは少し止まる。

俺は笑いながらペットボトルを投げた。


山中柔太郎
勇ちゃんって、一人で抱え込みがちじゃん


佐野 勇斗
……


山中柔太郎
平気そうな顔するし


山中柔太郎
努力してるのも言わないし


山中柔太郎
……だからさ


佐野 勇斗


山中柔太郎
勇ちゃんとか付き合う人は、そういうの分かってくれる人がいいな〜って


佐野 勇斗
……母親?


山中柔太郎
は?


佐野 勇斗
今の言い方


山中柔太郎
キモ、やめて



二人で笑う。

その時、スタッフに声をかけられた。


スタッフ
佐野さん、次お願いします!


佐野 勇斗
はーい!!



立ち上がる。

俺は後ろからニヤニヤしながら言った。


山中柔太郎
勇ちゃんさ、絶対好きじゃんそれ


佐野 勇斗
うるさ!!







佐野勇斗side



放課後。

下駄箱で靴を履き替えていると、後ろから声がした。


貴方
勇斗!



振り返る。

あなたちゃんが立っていた。

その瞬間。

俺は少しだけ目を細める。

二年生になるまで、正直学校なんてほとんど来ていなかった。

仕事だけで十分だったし。

むしろ、その方が楽だった。

でもマネージャーに、

『勉強も頑張りなさい!!高校生なんだから!!』

って怒られて。

渋々、学校へ来るようになった。

最初は、ただ“いるだけ”。

クラスにも特に興味なかった。

でも途中で、自分のクラスでいじめがあることを知った。

それだけで、学校に来る気が失せた。

誰かが傷ついてるのを見て見ぬふりする空気が苦手だった。

でも、自分が何か言ったところで変わる訳でもない。

そう思って、また学校から距離を置き始めた。

そんな時。

“いじめっ子が停学になった”

という話を聞いた。

理由は知らなかった。

でも少しだけ気になって、久しぶりに学校へ来た日。

最初に目に入ったのが、あなたちゃんだった。

教室の真ん中で笑っていて。

周りには自然と人が集まっていて。

男子とも女子とも同じ距離感で喋って。

なのに全然嫌味がない。

芸能界には、キラキラした人なんてたくさんいる。

でもあなたちゃんのそれは違った。

無理して作ってない。

自然で。

だから余計に眩しかった。

しかも。

ちゃんと人を見ている。

美咲ちゃんのこともそうだった。

普通なら、自分を守ろうとする。

でもあなたちゃんは違った。

泣きながら、“もっと早く気づけたかもしれない”って言った。

あんな風に、人の痛みに向き合える人、見たことがなかった。


佐野勇斗
お、あなたちゃん


貴方
そういえば、またドラマ決まったんでしょ?


佐野勇斗
あー……うん!



その瞬間。

いつもの流れを想像する。

“有名人ってすごいね”

“芸能人だもんね”

どうせまたそんな感じだろうって。

でも。


貴方
すごいね……!


佐野勇斗
……え?


貴方
だって、学校来ながら仕事もしてるんでしょ?


貴方
しかも最近めっちゃ忙しそうだったし


貴方
なのにちゃんと周りみてるし


貴方
クラスのことも気遣ってるし


貴方
普通にめっちゃ努力してるじゃん



真っ直ぐだった。

変に持ち上げる感じじゃない。

本気でそう思ってる目。

胸が、少しだけ苦しくなる。


貴方
私無理だもん


貴方
絶対途中で投げ出す 笑


佐野勇斗
……そんなことないよ



絶対にない。

あなたちゃんが投げだすことは。

これは、あなたちゃんなりの褒め言葉だろう。


貴方
あるよ



あなたちゃんは笑う。

でもそのあと、少しだけ真面目な顔になった。


貴方
だから普通に尊敬してる!!



その言葉に。

俺は、一瞬返事ができなかった。

ちゃんと見てくれてる。

表面じゃなくて。

自分の中身を。

それが、嬉しかった。

とてつもなく。


佐野勇斗
……あなたちゃんってさ


貴方
ん?


佐野勇斗
人の事ちゃんと見てるよね


貴方
え?


佐野勇斗
いや、なんか。



少し笑う。


佐野勇斗
凄いなって思っただけ!!


貴方
あざます?



不思議そうに首を傾げるあなたちゃん。

夕日が差し込む下駄箱。

オレンジ色の光の中で笑う彼女は、眩しいくらい綺麗だった。

───今をときめく俳優が、恋なんかしちゃってるのか。

もしバレたら、普通に炎上もんだ。

騒がれて、好き勝手書かれて、面倒なことになる。

そんなの、俺が一番よく分かっていた。

……でも。










佐野勇斗
……ほんとにすきだなぁ




















貴方
……え?


貴方
隙だな???


貴方
なに?バトル漫画始まる感じ?


佐野勇斗
……←



それすら、どうでもよくなるくらい。

彼女が笑うたび、胸の奥が掴まれる。

目が合うだけで、呼吸が浅くなる。

こんなの、もう───

“手遅れだ。”

気づかないふりなんて、できるわけなかった。

俺は、天使のように微笑む彼女に、気づけば心まで攫われていた。




ここまで読んでくださってありがとうございました!

佐野くんが恋に落ちる瞬間を書きたくて、このお話を書きました!!

キラキラした芸能界の中にいる彼でも、好きな子の前ではただの“恋する男の子”なんだろうな、と思いながら書いています🫶💕

下駄箱に差し込む夕日とか、不思議そうに首を傾げるあなたちゃんの仕草とか、何気ない瞬間なのに、佐野くんにとっては全部特別になっていく感じを大事にしました!!

“手遅れだ。”のところ、実は個人的にかなりお気に入りです。👼💞

恋って、自分で気づいた時にはもう落ちてるものだよな〜って。

少しでもドキドキしてもらえていたら嬉しいです!

感想や好きなシーンなどあれば、ぜひ教えてください🫶




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