山中柔太郎side
楽屋。
撮影の空き時間。
ソファに寝転がりながら、俺は向かいにいる勇ちゃんをじっと見た。
最近、なんか違う。
勇ちゃんがペットボトルを開けながら目を逸らす。
分かりやすすぎる。
M!LKとして活動してると、こういう時間は多い。
撮影の待ち時間とか。
移動中とか。
本番前の変なテンションとか。
その中で、俺は結構分かっていた。
勇ちゃんって、見た目よりずっと不器用だ。
周りからは、
“チャラそう”
“軽そう”
“顔だけで売れてそう”
そんなイメージを持たれやすい。
でも実際は真逆だ。
誰よりも台本読むし。
できないことがあると、見えないところで悩むし。
周りをめちゃくちゃ見てる。
でも、それを口にしない。
一人で飲み込む。
だからこそ。
“ちゃんと中身を見てくれる人”に弱いんだろうなって、思っていた。
でも。
否定の仕方が弱い。
俺はニヤニヤしながら続ける。
勇ちゃんは少し考えるように視線を落とした。
その瞬間。
なんとなく察した。
あ、これ結構本気だ。
勇ちゃんは少し笑った。
俺は少し黙った。
それ、かなり好きじゃん。
勇ちゃんは少し止まる。
俺は笑いながらペットボトルを投げた。
二人で笑う。
その時、スタッフに声をかけられた。
立ち上がる。
俺は後ろからニヤニヤしながら言った。
佐野勇斗side
放課後。
下駄箱で靴を履き替えていると、後ろから声がした。
振り返る。
あなたちゃんが立っていた。
その瞬間。
俺は少しだけ目を細める。
二年生になるまで、正直学校なんてほとんど来ていなかった。
仕事だけで十分だったし。
むしろ、その方が楽だった。
でもマネージャーに、
『勉強も頑張りなさい!!高校生なんだから!!』
って怒られて。
渋々、学校へ来るようになった。
最初は、ただ“いるだけ”。
クラスにも特に興味なかった。
でも途中で、自分のクラスでいじめがあることを知った。
それだけで、学校に来る気が失せた。
誰かが傷ついてるのを見て見ぬふりする空気が苦手だった。
でも、自分が何か言ったところで変わる訳でもない。
そう思って、また学校から距離を置き始めた。
そんな時。
“いじめっ子が停学になった”
という話を聞いた。
理由は知らなかった。
でも少しだけ気になって、久しぶりに学校へ来た日。
最初に目に入ったのが、あなたちゃんだった。
教室の真ん中で笑っていて。
周りには自然と人が集まっていて。
男子とも女子とも同じ距離感で喋って。
なのに全然嫌味がない。
芸能界には、キラキラした人なんてたくさんいる。
でもあなたちゃんのそれは違った。
無理して作ってない。
自然で。
だから余計に眩しかった。
しかも。
ちゃんと人を見ている。
美咲ちゃんのこともそうだった。
普通なら、自分を守ろうとする。
でもあなたちゃんは違った。
泣きながら、“もっと早く気づけたかもしれない”って言った。
あんな風に、人の痛みに向き合える人、見たことがなかった。
その瞬間。
いつもの流れを想像する。
“有名人ってすごいね”
“芸能人だもんね”
どうせまたそんな感じだろうって。
でも。
真っ直ぐだった。
変に持ち上げる感じじゃない。
本気でそう思ってる目。
胸が、少しだけ苦しくなる。
絶対にない。
あなたちゃんが投げだすことは。
これは、あなたちゃんなりの褒め言葉だろう。
あなたちゃんは笑う。
でもそのあと、少しだけ真面目な顔になった。
その言葉に。
俺は、一瞬返事ができなかった。
ちゃんと見てくれてる。
表面じゃなくて。
自分の中身を。
それが、嬉しかった。
とてつもなく。
少し笑う。
不思議そうに首を傾げるあなたちゃん。
夕日が差し込む下駄箱。
オレンジ色の光の中で笑う彼女は、眩しいくらい綺麗だった。
───今をときめく俳優が、恋なんかしちゃってるのか。
もしバレたら、普通に炎上もんだ。
騒がれて、好き勝手書かれて、面倒なことになる。
そんなの、俺が一番よく分かっていた。
……でも。
それすら、どうでもよくなるくらい。
彼女が笑うたび、胸の奥が掴まれる。
目が合うだけで、呼吸が浅くなる。
こんなの、もう───
“手遅れだ。”
気づかないふりなんて、できるわけなかった。
俺は、天使のように微笑む彼女に、気づけば心まで攫われていた。
ここまで読んでくださってありがとうございました!
佐野くんが恋に落ちる瞬間を書きたくて、このお話を書きました!!
キラキラした芸能界の中にいる彼でも、好きな子の前ではただの“恋する男の子”なんだろうな、と思いながら書いています🫶💕
下駄箱に差し込む夕日とか、不思議そうに首を傾げるあなたちゃんの仕草とか、何気ない瞬間なのに、佐野くんにとっては全部特別になっていく感じを大事にしました!!
“手遅れだ。”のところ、実は個人的にかなりお気に入りです。👼💞
恋って、自分で気づいた時にはもう落ちてるものだよな〜って。
少しでもドキドキしてもらえていたら嬉しいです!
感想や好きなシーンなどあれば、ぜひ教えてください🫶












編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。